小説・漫画に使えるプロット&ストーリーの書き方 – 総合まとめ!
こんにちは。楽しく学べる「プロットの書き方/作り方 入門講座」へ、ようこそ!
創作支援サイト「作家の味方」の管理人、
らぴ (@kazakiribana2)と申します。
もし貴方が、小説や漫画、映像作品を創作していく上で、物語を上手く書けているのかよく良くわからず。
あまり期待はしていないけれど「プロット 書き方」でとりあえず検索してみた。もしくは、過去に似たような言葉で検索したことが一度でもある。というのであれば。朗報です^^
ちょ!もうブラウザバック押そうとしてるでしょ!?
1分だけでいいから、読み進めてください!お願いします。なんでもしま(殴
▼動画版も制作してみました!
目次
物語における基本用語「物語・ストーリー・プロット・シナリオ」
コホン。みなさんは普段、物語とストーリー、プロット、シナリオという言葉をきちんと使い分けているでしょうか?
アンケートを取ったところ「違いはありそうだけど、イマイチどう違うのかわからない」という方が、多いようでしたので、一度この用語たちの使い分け方から解説していきますね♪
1. 物語とは、作品全体を表す用語
『物語』という言葉の意味は、現代社会において幅広く捉えられてしまっているうえ、国によってもその解釈が異なっているので、正確に意味を考察することは一先ず辞めておきます。
とりあえず、物語とは、ストーリーやプロット・シナリオを含む「語られたこと」それ自体であるというのが、一般的な捉え方とだけ覚えておくと良いでしょう。
これはラテン語である「narrativus(物語の)」という単語のコアの意味が「語られたこと」であることに起因しています。
ちなみに、物語の語源は「物が語る」という所から来ているのではないか? という解釈もなされているようです。
語源的には正確かわかりかねるところはありますが、とても面白い発想で後の議論に関わってくる話なので、以下引用させていただきます。
そもそも、「物語」ってなにか?
父親の形見であったり、実家の柱に書かれた身長を測るための線だったり、『北の国から』で純がお父さんから受け取っている泥のついたお札とか。ああいう、特別な物が語ってくれるから物語になるというのに、割と小説を書きなれてから触れて、「おお、そうか」と思ったレベルです。
一方、世界最古の物語である『バビロニア・ハッティ・カナアン』は、上記のようなヒューマンドラマ的な事例に比べると、かなり神話やファンタジーに近いお話となっているので、語源からすれば、少し解釈が離れている可能性があります。
ただ、面白いですよね。言葉というのは時代とともに、その解釈すらも変化させていくのですから。
2. ストーリーとは、出来事を時系列に並べたもの
続いては、ストーリーの解説です。
ストーリー(Story)とは、出来事(場面)を時系列に並べたものです。「ソードアート・オンライン」という作品を例にするとすれば、
- 出来事.1:主人公であるキリトが VR-MMORPG「ソードアート・オンライン」のベータテスターとして参加
- 出来事.2:西暦2022年、世界初の VR-MMORPG「ソードアート・オンライン」の正式サービスが開始
- 出来事.3:正式サービス開始に伴い、ゲーム攻略を始めた桐ヶ谷 和人
- 出来事.4:ゲーム内でクラインという男と出会う
- 出来事.5:一緒に冒険して、コツを教えてあげる
- 出来事.6:ログアウト出来ないことに気づく
といった感じですね。これがストーリーと言われるものです。
このように、物語において起きた出来事を時系列順に並べたもののことを「ストーリー」と言います。
3. シナリオとは、出来事一つ一つのこと
シナリオとは、ストーリーに沿って並べられた出来事一つ一つのことです。また、一般社団法人『日本放送作家協会』によれば、語源は以下の通りとなっているそうです。
シナリオとは?
シナリオの語源は英語のシーン(場面)を意味するイタリア語のシエナ(Scena)で、ルネサンス時代に即興喜劇の役者が、芝居の構成やストーリー、登場人物の人間関係などについてのメモ書きを「シナリオ」と呼んでいたのが起源だといわれています。
日本語では、脚本や台本と訳されることもあるので「物語の設計書」という意味も持ち合わせていますが、この記事においては「場面」という意味で読み込むことにしたいと思います。
また、小説・漫画における「箱書き」や「4コマ」の一つのコマというのは、このシナリオ(場面)を人に説明したり、管理するために脳内の設計書から目に見える形で、まとめたもののことを指します。
4. プロットとは、伝える順序を示す設計書のこと
最後に、タイトルにもある「プロット」ですが。
プロットとは、読者に物語を語る際の順序を示した設計書のことです。ちょっと、言い方がわかりにくいので具体例を使いましょうか。
ストーリーの説明をする際に挙げた「ソードアート・オンライン」の具体例でいえば、実際に作中で語られている順番としては「2→3→4→5→6→1」となっていることがわかります。
この「2→3→4→5→6→1」のことをプロットと呼びます。つまり、ソードアート・オンラインの場合は、以下のようなプロットになっているものと解釈できます。
- 出来事.2:西暦2022年、世界初の VR-MMORPG「ソードアート・オンライン」の正式サービスが開始
- 出来事.3:正式サービス開始に伴い、ゲーム攻略を始めた桐ヶ谷 和人
- 出来事.4:ゲーム内でクラインという男と出会う
- 出来事.5:一緒に冒険して、コツを教えてあげる
- 出来事.6:ログアウト出来ないことに気づく
- 出来事.1:主人公であるキリトが VR-MMORPG「ソードアート・オンライン」のベータテスターとして参加
たとえば、出来事.1は出来事.6よりも先にあったことですが、あえて物語の冒頭では描かず。「後から出来事.6が発覚するような設計に組まれたプロットである」という言い方になります。
そういうわけで、プロットを編み上げる上で大切なトリック手法の一覧を見ていくことにしましょう。
プロット構成には、パターンがある。
先述の通り、プロットとは、物語における出来事の順序・配置を示すものであると述べました。
しかし、これだけでは先に挙げた「ソードアート・オンライン」のプロットを「6→3→4→2→1→5」のようにアベコベに組まれていたとしても「プロット」と呼べてしまいます。
しかし、小説家や脚本家というのは読者からある程度は合理的で、わかりやすいプロットの設計を求められています。
これは事実の羅列と物語の違いが、事実同士の因果関係の有無によって生じるといわれいるからです。※詳しくは、こちらのページでアリストテレスの詩学を参照してみてください。
それでは、ある程度合理的でわかりやすい順序付けというのは、どうやって行えばいいのでしょうか?
そこで現代において最も参考とされている理論が、フランスの文学理論家である「ジェラール・ジュネット」氏によって作られた『ジュネット理論』と呼ばれるものです。
ここからの話がまさに、プロットの作り方についての話となります。
ここまで読んでいただいた方であればもう理解してもらえると思いますが、ここからはあくまで「プロットの作り方」についての話になります。
「物語の作り方」や「ストーリーの作り方」が知りたいという方は、以下のページを参照してみてくださいね!
▼ 小説の書き方&物語の書き方 – 全まとめ!
▼ストーリーの作り方まとめ!
ジュネット理論とは?
さて、ようやく「プロットの作り方」らしい話ができるようになりますね(笑)
『ジュネット理論』というと小難しく聞こえはしますが、言っていることは、とてもシンプルです。
物語における出来事の順序と配置の仕方(=プロットの組み方)は、以下のように分類できるよというだけのお話なのです。
<ジュネット理論の概略>
一つ一つ解説すると、かなり長くなると思いますので、適宜↑の各リンクから飛んで読みたい所だけ掻い摘んで読んでみてください。
1.錯時法(さくじほう)
錯時法(さくじほう)とは、物語世界で起こった出来事の順番と物語内で語られる順番を「あえてズラす」という技術です。最もメジャーなプロット構成技法の一つといえるでしょう。
大きく分けると、これから起こる出来事を先に記述する『先説法』と、昔に起こっていた出来事を物語が進んだ後に叙述する『後説法』があります。
・先説法(せんせつほう)
先説法によくあるのが「これは、僕が〇〇になるまでの壮絶な冒険を描いた物語である」といったキャッチフレーズですね。
結論が先に述べられているので、一見ネタバレのように思えますが、読者に「どうやって成ったんだろう?」と疑問符を浮かばせる事ができれば良策だと言えるでしょう。
読者は、その疑問の答えを探す旅を始めるために、小説や漫画を最後まで読んでくれやすくなるでしょう。どちらかというと、王道系のストーリーに多い気がします。
・後説法(こうせつほう)
次に、後説法を使った技法として有名なものが『伏線トリック』や『フラグ配置』です。事件ものなんかは、ほとんどコレですよね。
昔にあったこと(=時系列としては前半にあるはずの事件の真相など)が、物語の最後になってようやく読者の知る所となる展開は、後説法の典型的なパターンといえるでしょう。
そのため、読者に気づかれないように、昔の出来事が波及して起こったことと思われる痕跡をシナリオのあちこちに散りばめて配置します。これが伏線の設定です。
2.物語の進行速度
続いては、物語の進行速度を操る技法を見ていくことにしましょう。これは大きく「休止法・情景法・要約法・省略法」の4つに分けられることが知られています。
・休止法(きゅうしほう)
休止法とは、物語世界での時間を止めたり、スローモーションにして描写することです。
よく戦闘シーンなのに、ヒーローが考えている間、敵が待っててくれるという場面はみたことないでしょうか?他にも、最愛の人物がトラックにはねられる瞬間をコマ送りで描写したりすることもありますよね。
これは当然、敵が待ってくれているのではなく、物語世界の時間を停止させて描くというプロットによる演出技法の一種です。これを悪用すると文字数が稼げたりもします(笑)
ただし、休止法にも弱点があることが知られています。作者が大切なシーンだからとコマ送りのスローモーションで描写していると読者が気分を害す場合があるのです。
例えば、医者が患者の外科手術をするとして、読者からすれば「大事なシーンなのはわかるけど、無駄にグロテスクな場面を鮮明かつ詳細にかかれるのは酷」となることがあるんですよ。
効果的に使うことを考えるのであれば、「自然と戯れる場面」や「人が笑顔で至福のときを過ごす場面」、「美味しいものを食べる場面」のように心地いい場面で活用してあげるのが、ベターではないかと思案します。
・情景法(じょうけいほう)
解説内容は、至極かんたんです。登場人物が過ごしている時間通りに描写をするだけの方法です。会話文なんかは、ここに入ります。
しかし、面白い場面だけを切り抜いているわけではないので、もし面白く見せようとすると、どうしても難易度が高くなります。
小説で描写しにくいと言われている「戦闘シーン」や「歌っている場面」は、通常こういった理由で正真正銘の「情景法」を用いることは少ない傾向にあります。ほとんど、次で説明する要約法に自然となるでしょう。
▼戦闘シーンの書き方については、こちら!
・要約法(ようやくほう)
ストーリーを1から10まで描写するのは、ほとんど不可能ですよね。実は、それをやってのけようと皮肉に富んだ作品を創った有名作家さんもいたりはしますが、通常は要約法を用います。
要約法というのも、読んで字のごとく「要約」して読者に物事を伝えるというだけの話なのですが、要約に失敗するパターンがとても多いので気をつけたいところです。
これがいわゆる「ご都合主義」とか「説明が多すぎて読みにくい」とか、「描写不足」と呼ばれるものたちですね。
もし小説において、説明が多くて読みにくくなるのを回避したければ、修辞技法(レトリック)を学ぶべきでしょう。
私がよく使っているのは、比喩の一種である「転喩(てんゆ)」と呼ばれる方法です。説明はちゃんとしつつも、場面はカットできるので、とてもお勧めです。
こちらは物語を創作する力というより文章表現能力の世界になるので、ここでは詳細を割愛します。
また、逆に要約しすぎると十全な説明がなされてないが故に、ご都合主義を言われることがあります。
こういった場合は、「要約法」から「情景法」に描写方法を変更するだけで、ほとんどの場合解決することができるでしょう。
・省略法(しょうりゃくほう)
省略法とは、あったはずの出来事を書かないことです。
一見すると、「場面を飛ばしてるだけか」と思われるかもしれませんが、これを利用したものが「叙述トリック」と呼ばれる技法たちです。
※叙述トリックとは、読者の先入観や思い込みを利用して、物語の最後になってアハ体験(=なるほど!そういうことだったのか!となる体験)を作り出す技法たちのことです。ミステリーの基本概念になりますが、詳しくは別途解説します。
具体例を一つあげておくと、年末に忙しく仕事をしてる主人公のことを面白おかしく描写していて、実はサンタクロースだったということが、最後に読者に判明するといったものがあります。タイトルは、ネタバレになるので内緒にしておきますね♪
実際に有名な作品なので、参考になるかもしれません。
3.語られる出来事の頻度
物語の中で登場する出来事は、何も同じ出来事だからといって1度しか描写されないわけではありません。
視点を切り替えて、もう一度同じ場面を描写したり、フラッシュバック(回想)することもあります。SFものであれば、フラッシュフォワード(未来視)も登場してくることでしょう。
パターンとしては、単起法・反復法・括復法の3つにわけることができます。
単起法は、通常通り一度起きたことを一度描写する技法なので割愛するとして、残りの二つを解説していきたいと思います。
・反復法(はんぷくほう)
反復法も文字通りですね。一度あった出来事を二度、三度と描写する技法のことです。
やりすぎると、読者が「もう何回も見たよ!」となります。涼宮ハルヒの憂鬱に登場してきた「エンドレス・エイト」なんかが、良い例ですね。
しかし、修辞技法の一つである照応法(=主人公の心理状態が変化した後に、同じような出来事を描写して心情の変化を浮き彫りにする手法)と組み合わせて使用されると威力アップに繋がります。
『モブサイコ100 Ⅱ』という作品で登場してきた具体例は、こちらから解説していますので参考にしてみてください。
・括復法(かっぷくほう)
括復法とは、複数回起こっている出来事を一度だけ描写するに留める技法のことです。
似たような出来事を何度も繰り返されると、読者も飽きてしまいますしサクサク進めるのにはうってつけな方法といえるでしょう。
ただし、魔法の詠唱シーンや、マシンの起動時といった読者がロマンを感じやすい瞬間に使用すると逆効果になるので注意しましょう。
キャラクター同士の合言葉など、括復法を敢えて逆手に取った手法があるので、物語をサクサクするためのだけに使うのではなく、メリット・デメリットをしっかり把握した上で使いこなしてあげたいですね。
4.芸術に対する姿勢(ミメーシス VS ディエゲーシス)
このセクションの話は、まともに話すと難しいのでザックリの説明に留めることとします。「芸術に対する姿勢」と書くと、メンタル的なものかと思われるかもしれませんが違います。
普段の日常会話をするときのことを考えてみてほしいのですが、人類の会話には二種類の会話方法があるそうなんです。論理的な話(真実を追求することを目的とする話し方)か、感情的な話(心地よさを追求することを目的とする話し方)かです。
論理的な話をしたかと思えば、唐突に感情的な話にされると、人間というのはどうにも他者を理解できない傾向にあるようです。
実は、文章を使っている以上、物語においてもこれとまったく同じことが起こります。つまり、物語を通して論理的な話なのか、感情的な話なのかによって、好まれるプロットの形が違うのです。
論理的な話においては「起承転結」というテンプレートが好まれますが、感情的な話(音楽や舞踏)においては「序破急」というテンプレートが好まれるという風に、差が出てきてしまうということは知っておくべきでしょう。
このとき専門用語では、真実や事実を追求しようという芸術姿勢のことをディエゲーシス(叙述)、逆に真実はどうでもよくて快いかどうかを追求しようという芸術姿勢のことをミメーシス(模倣)と呼びます。
かなり初心者にはわかりにくい概念なので、ここは読み飛ばしても構いません。
プロを目指したい方は、詳細はミメーシス&ディエゲーシスの説明ページを参照してもらうことにして、この記事では「ジュラール・ジュネット」の言葉を借りて、ミメーシスとディエゲーシスの正確な意味を補記しておくことに留めたいと思います。
ジェラール・ジュネット『物語のディスクール』
▼ミメーシス[mimesis]
詩人が、物語っているのは自分ではないという錯覚を、つまり、物語っているのはしかじかの作中人物であるという錯覚を、詩人がつとめて与えようとしている場合。▼ディエゲーシス[diegesis]
詩人が、物語っているのは自分以外の誰かであるとわれわれに信じさせようとはせずに、詩人自身の名において物語る場合。
ほとんどの方が、これだけだと何をいっているのか理解できかねている気がするので、少しだけ補足で説明しておきます。要するに、ジラール・ジュネット氏は、以下のように整理したというわけです。
1.「語り手≠作者(視点の位置も主人公ではないことがある)」となっている形式のことを、ミメーシスと呼ぶことにします。
2.「語り手=作者(視点の位置も主人公)」となっている形式のことを、ディエゲーシスと呼ぶことにします。
「なぜに?」と思われる方も多いかもしれませんね。
ここで冒頭でお話した「物語とは?」という話が役に立ってきます。そう、物語は「物が語るもの」なのか「物を語るもの」なのか、という話です。
たとえば、数十年ぶりに訪れた実家の木柱に刻まれた身長の伸びを表現してくれる傷跡「=物が語る描写」は、ここで言うミメーシス(情景の模倣)です。主人公ではなく、物が語り手となっているからですね。そして、冒頭で話したとおり、真実かどうかは重視していません。
逆に、作者が物を用いず「身長が伸びました!」などセリフで直接的に物語る(叙述する)のは、ディエゲーシスといえるでしょう。こちらは作者が主人公の体を借りる形で、作者=語り手となっているからです。そして、こちらも冒頭で話したとおり、虚偽であれば物語に影響を与えかねないので真実さを重視されることになります。
さて、そろそろ疲れてきた頃かと思いますので、ジュネット理論の5~6番目は、一度ここでは割愛して以下の記事で学ぶことにしましょう。
▼ カメラアングル(フォカリゼ―ジョン)について
物語の作り方は、二通り。
ここからは、実際に物語を作るフェーズに移って行こうと思うのですが、実は物語の作り方というのは大きく二つに分けられており、それぞれで全くもって製作方法から何からまるで全てが違います。
一般的に、起承転結や三幕構成といった方法で物語を作られると論じられる記事や書籍が多いのですが、
物語に対して設定している『プレミス』によっては、もう片方の製作方法(フリー・スケッチ)ではないと、上手く作り込めないという場合があります。
ずばり、「ミメーシス型プレミス」と「ディエゲーシス型プレミス」(仮称)です。それぞれ、物語の作り方としては、以下のようなセットになることでしょう。
『プレミスの二大区分』
▼ミメーシス傾向が強いプレミス
メインプレミスを中心に、アウトラインを作成せずにサブプレミスと序破急で物語を構成する方法。
具体例:キノの旅、言の葉の庭、少女終末旅行
▼ディエゲーシス傾向が強いプレミス
起承転結や三幕構成などを利用して、アウトラインから物語を作る方法。
具体例:七つの大罪、転生したらスライムだった件、PSYCHO-PASS
※この分類は、あくまで管理人の独断と偏見によって作られているので注意してください。
みなさんに留意して欲しいことは、パッキリとミメーシス型とディエゲーシス型に分かれるというわけではなく。
どちらの要素が強いか、といったグラデーションのある、あくまで傾向のようなものだと思ってください。
ミメーシス型のプロット設計方法をフリー・スケッチ呼ことがあります。また、図書館戦争シリーズの著者である有川ひろさんは、ライブ型と言及していたそうですね。
反対に、ディエゲーシス型のプロット設計では「アウトラインプロセッサー」と呼ばれるプロットツールを用いて、ガチガチにプロットを組み上げていきます。そのため、プロット型と呼ばれることもあるそうです。
プロット不要論を論じがちなのは、このミメーシス型の作家さんでしょう。
逆に、SFや純粋なファンタジー作品の作家さん達からすれば、「アウトラインプロセッサー」は必携ツールのようなものになります。
実は、中間型としてショートショートを中心に肉付けして、そもそも長編をあまり書かないスタイルの方もいらっしゃるようです。
プロット作成の事前準備
そろそろ小説を実際に書き始めたいという気持ちもわかるのですが、プレミスを既に持っている作家さんは、このセクションであと一息です!
ミメーシス型、ディエゲーシス型双方に共通することなのですが、物語の完結をするためには必ずプレミスから「結末時点の状態」と「超大技」の類は、最初に決めておく必要があります。
超大技というのは、『小説における人称』や『カットバック(=交互に視点が移動するように物語が描かれる技法)』といった要素のことです。
他にも沢山あると思うのですが、おおよそプロットを作成した後から決めると、プロットを書き直さざるを得なくなるものを大技と言及しておきます。
例えば、男子トイレの描写をプロットに組み込んでいたとして、ストーリーもかなり進行した時点で、主人公が女性だったと頭を悩ませることに成ったり。
一人称視点で最初から最後あたりまで書き続けていたのに、突然視点が移動したくなったといって作品を一から練り直すといった事象が起こります。
一人称視点の作品の場合、主人公から遠く離れたところに居る敵サイドの描写が描けなかったりしますので、後々になって、描けないじゃん!と気づいた時には、もうお察しの通りなのです。
それでは、物語の結末を描写可能な範囲で詰める方法と、大技のメリット・デメリットを順番にみていくことにしましょう!
ミメーシス型の結末作成法
ミメーシス型プレミスから結末を作成する方法は、とても簡単です。わかりやすくするために、具体例をあげておきましょう。
何度も利用させていただいていますヴァイオレット・エヴァーガーデンから「感情を持たない少女が、愛を知るまでの物語」というミメーシス型プレミスを拝借して解説していこうと思います。
ミメーシス型の結末作成法は、プレミスを疑問形に変更するだけです。
つまり、「どうやって、感情を持たない少女が愛を知るのか?」とか、「愛とは何か?」という形にするだけなのです。
よく書籍では「テーマ」を決めろとか、散々いわれたことがあるかもしれませんが、これがまさに作品に対する「テーマ」の見付け方の一つです。
ちなみに、「セントラルクエスチョン」や「IFのプレミス」とも呼ばれることもあります。
さて、「愛とは何か?」をメインプレミスとしたとき、その答えは一つではないと容易に想像できます。
人によって、愛の形というものは違うでしょうし、同じであったとしても表現の仕方は人や時代によって左右されていきます。その解答一つ一つが、伝えたいこと。
すなわち、サブプレミスと成って大量の物語が、一つの物語の中に内包されつつ生まれていきます。
それを数珠つなぎのように短編集として繋いでいくことで、設計書がそもそも要らない設計を構築することができるのです。
そういうわけで、「愛は〇〇である」と書く解答を描きたい場合に、○○の部分には何が入るか沢山の候補をあげます。ブレーン・ストーミングといった手法を使っても良いでしょう。
そして、一つ一つは短編なので、プロットのような計画書がなくても、ある程度書くことが出来ます。
このように、ミメーシス型のプレミスは、ディエゲーシス型のように「ゴリゴリの計画書を不要にして勢いを大切にして書こう」というスタンスになる傾向があります。
ディエゲーシス型の結末作成法
ディエゲーシス型のプレミスを持つ作品としては、「戦場のヴァルキュリア」なんかが挙げられるでしょう。
正確なプレミスではないかもしれませんが、おおよそ「特殊な力を持った少女が、祖国を守るために戦う物語」となっています。
この時、ミメーシス型と同様で何パターンも結末が思い浮かびますよね?
「敗戦して結末を迎えるのか」、「勝利して主人公が、犠牲になるのか」あるいは、「主人公も生還してハッピーエンドなのか」と言った感じです。
しかし、ここで問題が発生します。ミメーシス型であれば「解答がいくつもある疑問」をサブプレミスとして持つので、数珠つなぎの短編集にできますが。
ディエゲーシス型では、ストーリーという「解答がただ一つしか無い疑問」をサブプレミスとして見てしまいます。これでは、結末が複数できて矛盾だらけになってしまうのです。
そのため、「ディエゲーシス型プレミスでは、サブプレミス同士に矛盾が生じないようにしなければならない」という鉄の掟が敷かれることになるのが自然な流れでしょう。
これを死守するために生まれたのが、アウトラインプロセッサーです。アウトラインプロセッサーというのは、あくまでプロットを書くツールの呼び名に過ぎませんが、ほとんど「緻密なプロットのこと」だと思ってください。
矛盾しないか監視する装置ですね。
では、ディエゲーシス型の作品には、どのようにしてオチをつければ良いのでしょうか?
その答えは、ロマン型とノヴェル型と呼ばれる、物語の二つの型によって決定しておくことができます。
それについては、以下の記事にまとめておきましたので、事前にチェックしておくと良いでしょう。
さて、ディエゲーシス型プロットの方が、一般的に知られているので、まずはそちらから解説していきたいと思います。
ディエゲーシス型プロットの書き方
結論から言うと、物語を作ろうとして手が止まった時は以下の3つの手順で物語を作りましょう。
◇◆◇ 物語を作る手順 ◇◆◇
Ⅰ.面白さは考えず起承転結を作る
Ⅱ.結末を喜怒哀楽に結びつける
Ⅲ.ジャンルとキーワードを決める
あとは、風景や台詞を書き起こしていけば、自然と筆が乗ってくると思います。最初は起承転結を面白く考える必要はありません。ここから面白くしていけばいいのです。
というわけで、実際にストーリーとプロットの作成手順を具体例でお見せしていきます。
とにかく実践!ストーリーを作ろう!
さて、「ストーリー」を作るのは至極簡単です。先述の通り、ストーリーはただの出来事の連続に過ぎないからです。というわけで、実際に作ってみました。
◇◆◇ ストーリーの具体例 ◇◆◇
出来事.1:病気で入院した。
出来事.2:何事もなく退院した。
出来事.3:普通の生活に戻った。
「いやいや、全然面白くないじゃん!」って思ったかもしれませんね。ご安心ください。これからめちゃくちゃ面白くしていきます(笑)
ご覧の通り、いまのままでは物足りなさを感じてしまいますね。というわけで、冒頭でご紹介した手順で物語を組み替えていくことにしましょう。
Ⅰ.面白さは考えず起承転結を作る
最初は面白さを考える必要はないですが、やはり起承転結の「転」が無いと淡々として、つまらなさが際立ってしまいますよね。
これでは読まなくても次が予想できるので、読者の心が一切動かせないのだと思います。
というわけで、転を追加してみましょう。
上の例で転を作るためには、「出来事.2」の後に起こりそうな出来事と「出来事.3」が真逆になっている必要があります。
◇◆◇ ストーリーの具体例 ◇◆◇
出来事.1:病気で入院した。
出来事.2:入院が長引いていた。
出来事.2.5:タイミング良く新薬が出来た。
出来事.3:普通の生活に戻った。
この具体例では、出来事.2からは「入院した⇒普通の生活に戻らない」という流れを作ります。
一方、出来事.3では「普通の生活に戻らない」の逆である「普通の生活に戻る」という展開にしておきます。
また、起承転結の「起」も設定が甘くなっています。
起承転結に関する深い考察は「起承転結それぞれの意味をわかりやすく解説!~小説における起承転結の使い方~」という記事に任せますが、
起承転結の「起」は、ストーリーが始まる前に読者に伝えておくべき前提のことだと理解しておけばOKです。
というわけで、起承転結の「起」にあたる部分をもう少し具体的にしておきました。
◇◆◇ ストーリーの具体例 ◇◆◇
出来事.1:社長である私は、病気で入院。
出来事.2:入院が長引いていた。
出来事.2.5:タイミング良く新薬が出来た。
出来事.3:普通の生活に戻った。
まだ面白くは無いかもしれませんが、物語は段々見えてきましたね。次のステップに進む事にしましょう!
Ⅱ.結末を喜怒哀楽に結びつける
さて、続いては結末を喜怒哀楽に結び付けましょう。
これがなければ起承転結の「結」に至った時に、読者が「で?」といいたくなる作品になってしまいます。以下のように書き直してあげましょう。
◇◆◇ ストーリーの具体例 ◇◆◇
出来事.1:社長である私は、病気で入院
出来事.2:入院が長引いていた
出来事.2.5:タイミング良く新薬が出来る
出来事.3:病気が治り、ある人との約束を守る
上の例では、出来事.3を結末として「ある人との約束を守らせて、喜びにつなげる」という展開にしてみました。
読み返してみると、ドラマのワンシーンが想像できそうな展開にはなっていませんか?
Ⅲ.ジャンルとキーワードを決める
最後は、ジャンルを決めていきましょう。実は、ジャンルによってもプロットの作り方は若干異なってくるからです。
突然ですが、友人から日常系ほのぼの作品やギャグ漫画について「ストーリーを教えてよ」といわれたとき、きちんと起承転結を友人に説明できますか?
私はどうも上手く説明できずにいたのですが、実はそこにジャンルによるプロット製作法の違いが現われていたのです。
「ちょっと、何言ってるのかわからない」という方のために、もう少し説明しておきます。
シリアスな展開の作品(ディエゲーシス傾向の強い作品)であれば、起承転結は読者からしてもわかりやすいのです。
それは何故かというと、起承転結に該当している出来事が一々衝撃的だったり強力なインパクトを誇っているからです。
一方で、日常系やギャグ系の作品(ミメーシス傾向の強い作品)では、ストーリーを揺るがすほどの重大な出来事や衝撃的な出来事は登場してきません。むしろ些細な物事を繊細に捉える傾向があります。
ここで大事なのは、ストーリー作りのときに並べる出来事が客観的に観て、どのくらいのインパクトなのかというのはジャンルによって使い分ける必要があるということです。
このインパクトの強弱がジャンルと合っていないと、いわゆる「超展開」や「物足りなさ」を感じさせることになります。
感動系の作品なのに、お気に入りの洋服にしみがついた程度の出来事を盛大に描かれても共感できないというのと同じです。
というわけで、これを具体例に適応してみましょう。ジャンルは、シリアスに寄せてみました。ジャンルがシリアスなので、出来事の衝撃性を高めてあげましょう。
◇◆◇ ストーリーの具体例 ◇◆◇
起:10代にして社長である主人公は、病気で入院した。
承:病気は中々治らず、余命を宣告され自棄になる。
転:絶望的なタイミングで新薬が開発された。
結:死の淵から生還し、同じ病気で死んだ人と結んだ約束を守った。
「起」では、健康という印象と真逆の「若さ」を組み込むことでインパクトを補強しました。
また、「承」に関してはただの入院から余命宣告へ変更。「転」に関しても、タイミング良くから絶望的なタイミングにとしてインパクトを増強。
最後に、「結」では約束相手を故人にすることで約束の重要度を強化してみました。
さて、これを面白いかと問われれば読者によってくると思いますが、一番最初に作っていたストーリーよりはかなりマシになっていませんか?
あとがき
長文でしたが、ご精読ありがとうございました。お疲れ様です。
当サイト「作家の味方」では、小説や物語を少しでも書きたいと思った方に、必要な知識を楽しく学べるよう、これからもたくさんの記事を掲載していく予定です。
ほぼすべての記事を全体像としてまとめている記事を、ページ最下段から飛べるようにしておきましたので是非参考にしてみてください。お役に立てれば幸いです。追い風を祈る!
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