『言い回し』の広げ方!
小説を書くのに慣れてくると、『言い回し』のバリエーションを増やしていきたいものですよね。
それでは、どうやったら言い回しの幅が広くできるのでしょうか?
結論から言えば、『コロケーション』と『大和言葉』を意識すると良いでしょう。
コロケーションというのは、「語と語の繋がり」を意味する英語なのですが。例をみると、すぐにわかると思います。
例えば、「あの人のことが好きだ」という感情を、文章で表現したいとしましょう。そんなとき、『愛』というフレーズが、頭の中に出てきたとします。
多くの人は、「『愛』が~、うーん。なんと言えば良いのだろう?」と考えることでしょう。
そうやって、少し考えて「愛が、ふとうごいていた」といった表現(言い回し)が、出てくるような仕組みになっているんですよ。
こうやって、ある単語があったら文脈的に前後に続きやすい言葉を集めているのが、『コロケーション辞典』です。
これを使いこなすと、文章表現については適切な言葉が思いつかないときに、チートできるというわけですね。
大和言葉についても、以下の記事で解説しておきましたので参考にしてみてください。
ちなみに、無料でもネット上にコロケーション辞典はあります。ただ、青空文庫を参照元に自動的に作成されていて、古かったり小説に使えない言い回しも含まれているので少し注意が必要です。
また、「コロケーション」だけでは『行動描写』をカバーできないことがあるので、そちらについても追加で解説していこうと思います。
描写の中でも、キャラクターの表情や動きを作り出してくれるのが、『行動描写』と呼ばれる部分なのですが、『行動描写』においては、文章表現が持つ『二階層構造』について知っておくと、辞書や表現一覧をさらにフル活用できるようになることでしょう。
言い回しの『二階層構造』
『行動描写』の言い回し方は、二階層構造になっていることが知られています。
第一階層目では「アクション&リアクション」という観点での表現の幅が存在し、第二階層目では「描写の選択」という表現の幅が存在しています。
もう少しわかりやすくするため、具体例をあげておきますね。
例えば、「告白を断られた場面」を表現したかったとしましょう。
第一階層では、ある登場人物が「告白した」というアクションに対して、断られたときの「リアクション」を見ることができます。
そのとき、「その場で泣き崩れる」のか「無理やり笑顔を作って、その場を逃げるように去る」のか、それは登場人物次第でしょうが。
この時どういったリアクションを描くかという所が、第一階層における表現の幅になります。※こちらについては、キャラ設定のセクションでも解説しています。
そこが決まれば、次に決めるべきは第二階層における表現です。第一階層で「その場で泣き崩れる」という表現を描こうと考えた場合を想定して話を進めます。
第二階層では、さらに細かく「主人公から見えた頬を伝う涙」を描くのか、「泣き崩れた姿勢」を切り取って描くのかというところを決めていきます。
このように、階層構造に分けて表現の幅を自在に広げていくスキルは、描写の幅を大きく広げ、文章そのものを魅力的なものにしてくれるのです。
より具体的には、ブレーンストーミングを日頃から行っておくことで、悲しんだときの行動バリエーションをマップ状に保管して活用していくと良いでしょう。
しかし、実際に『行動描写』を書こうとすると、非常に難しい事がすぐにわかると思います(初心者であれば、尚更です)。
『地の文』の作り方に関する記事に書いていることを実践された方なら、体感的にわかるかもしれません。※リンクをたどって戻ってこれるようにしておきました。
それはどうやら、行動描写を創り出す「不完全動詞」と呼ばれる動詞たちと、地の文のもとである「婉曲表現」との相性が非常に悪いことに起因しているようです。
問題児「不完全動詞」とは?
不完全動詞というのは、補語(形容詞や副詞)が無いと使えない動詞のことです。
具体例としては、「~である」とか「~になる」といった動詞が挙げられます。「私はである」とか「私になる」とかって言われても、文として意味分かんないですよね。
こうなってしまうのが、不完全動詞たちです。
逆に、「食べる」とか「香る」といった完全動詞たちであれば、比較的容易に婉曲表現ができるのですが。※以下、例文です。
一方で、不完全動詞の場合に婉曲表現を用いると以下のようになります。
少し、回りくどさを感じませんでしたか?
元々、不完全動詞というのは、補語を伴わなければ意味が通じないという言葉通り「不完全な動詞」なわけなので。
そこから更に、婉曲によって表現をぼかすと「ぼかし過ぎ・不完全すぎ」という状態になってしまうのです。
たしかに、婉曲というのは、表現をぼかす代わりに、文に魅力を与えてくれます。
しかし、ぼかしたら意味が伝わりにくくなる部分にも、使用するとこうなってしまうのです。それでは、どうすればいいのでしょうか?
平文のままにするというのも、一つの手でしょう。そして、もう一つの方法が、メタファー(比喩)の活用です。
婉曲が遠回しな言い方をするのに対して、比喩はわかりやすく噛み砕く言い方なので、ある意味で逆方向の作用をしてくれるんです。
このように、比喩と婉曲を使いこなしていくことができれば、行動描写を攻略していくことができるようになるでしょう!
ちなみに、この例で使用した比喩表現は「転喩」です。教師になったということは、その後に教壇に立ったのであろうという憶測から、比喩を生み出しています。
この転喩という表現技法は、とても使い勝手が良いので次のようにして活用すると良いでしょう。
よくわからないという方のために、フレームワークを作ってみました!後述の通りですが、描写がうまく出てこないときは、あえて描写ではなく説明文を書いた後「~と、どうなる?」と自問自答すると良いでしょう。
説明文を描写に変換するコツ
説明文:彼は怒った。
↓「彼は怒ったら、どうなる?」
描写文:彼の眉間にあったシワは深くなり、顔色は火照ったような赤みを帯びていった。
こういった8種類ある比喩のうまい使いこなし方についての詳細は、以下の記事を参考にしてみてくださいね♪
▼ 比喩の種類8つ全部いえるかな?
▼ 『言い回し方』を広げる練習方法まとめ!
コメントを書き込む