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モチーフの意味をわかりやすく解説!|小説・物語創作におけるテーマやコンセプトとの違いとは?

小説創作におけるモチーフの意味をわかりやすく解説!


小説や物語におけるモチーフ(仏:motif)とは、「北欧神話」や「魔王と勇者」といった創作者の感性を刺激して制作の動機となる素材や考え方のことを意味する言葉です。

 

これに対して、テーマ(独:theme)というのは別に創作者が感性を刺激された原因となったものではなく、単になにを書くかとりあえず適当に『決めたもの』のことです。

 

モチーフとテーマは混同されやすいが、両者は別物です。これはモチーフの『魅力の部分』が、時としてテーマとして設定されることがあるからだと思います。

 

少しわかりにくいと思いますので、具体例からみていくことにしましょう。

 

たとえば、『ハリー・ポッター』という魔法が登場するファンタジー作品を見て「小説が書きたい!」と奮い立たされたのであれば、その後書く小説のモチーフというのは『ハリー・ポッター』あるいは『魔法ファンタジー』といったもののことを指すことになります。

 

一方で、魔法の持つ魅力の中でも作者が『詠唱』にドハマリしていて、『詠唱』についての架空の歴史を創造し、それを主軸に濃い物語を描いていったとすれば、その作品のテーマは『魔法詠唱の歴史』と言えるというわけです。





 

モチーフとテーマの違い


つまり、モチーフというのは作者が心を動かされた(受動的な)題材のことで、テーマというのは作者が読者の心を動かそうとするために用いる(能動的な)題材のことなのです。※今回の最重要ポイントです。

 

それ故、「人生の生き方がテーマです」という文であればなんら違和感はありませんが「人生の生き方がモチーフです」といってしまうと、どうにも違和感を抱いてしまうと思います。

 

これはモチーフという言葉が、そのニュアンスとして「具体的である」という性質を持っているからでしょうね。

 

こういったケースでは、作者があくまで主体的に「人生の生き方」を描きたいのであって、「人生の生き方」という抽象的な概念そのものに心躍らされて書き出したわけではないからでしょう。

 

もちろん、『○○さんの生き方』というように抽象的ではない個別具体的な部分に心動かされて書き始めたのであれば、それはモチーフと呼んでも違和感はでないでしょう。

 

このように、世の中にはどうやら『テーマ≒モチーフ』となっている作品と『テーマ≠モチーフ』となっている作品があるようなのです。※『≒』は、ほとんどイコールという意味の記号です。

 

以前、『小説題材の探し方』という記事のなかで、小説におけるテーマは「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「メッセージ」の四つに大別されるという話をしていました。

 

このうち受動的な題材として取り上げられるもの、つまり作者自身が心動かされて着想となりやすいアイデアには「キャラクター」「ストーリー」「世界観」といったものがあり、

 

逆に能動的なもの、すなわち作者がなにかしらの意図を持って作品の主軸に据えたい設定になりやすい要素が「メッセージ」になるのだとおもいます。

 

世の中には私の知らない作品もまだまだ山のようにあるので、一概にここまではっきりわかれているかどうかはわかりませんが、少なくとも「メッセージ」をテーマとして扱う場合は「テーマ≠モチーフ」となりそうですね。

 

小説においてあらかじめ用意しておいたメッセージを伝えるというのは非常に高度な技術ですが、一つのヒントとして、メッセージをテーマにしたい場合は、モチーフをノンフィクションにするという手があります。

 

読んでいた本のストーリーが、過去の史実と類似点が多いものになっていると、歴史は繰り返すといわんばかりに読者に対して暗に「次は、お前の番だ!」と伝えることができるので、話の重みが増すというカラクリです。

 





 

モチーフ≒テーマのメリット&デメリット


モチーフとテーマがほとんど一致していると、非常に書きやすくなることが大きなメリットになるでしょう。心の行くままに、好きなものを好きなだけ書けばいいことになりますからね。

 

スランプのときなんかは、このような書き方をすると心理的ハードルも下がって効果的かもしれません。

 

一方で、自身の心を動かした作品の世界を二次創作的に作り上げていくことになるので、デメリットとしてオリジナリティを出すのが難しいという性質も持ちあわせています。

 

そこで発展してきたのが、いわゆる厳選された人気モチーフを逆用した『テンプレ小説』というやつです。

 

『小説家になろう』といった投稿サイトの作品でいえば、いわゆる『ループもの』とか『悪役令嬢』といったキーワードをモチーフとした人気作品を容易に探し出すことが出来ると思います。

 

要するに、書き始める時にはオリジナリティなんてものはかなぐり捨てておいて、既に厳選されているみんなが好むモチーフ自体の魅力で押しきりつつ、いい感じのタイミングでメッセージを合間に挟んでしまおうといった戦略ですね。

 

古来から人々は物語を思いどおりに作るために、世界中の人気作品の共通項を調べ物語の骨格を明らかにしようとしてきました。

 

そうやって、より質の良い物語を再現しようとしたのが起承転結や序破急といった骨格(プロット)だったわけですが、実はこういった研究はアイデアの分野でも同様に行われていました。

 

その中でも一番有名なのが「アールネ・トンプソンのタイプ・インデックス(AT分類)」と呼ばれるものです。※以下、引用です。全部読む必要はありません。

 

1.動物昔話 (1-299)
ー(1)野生動物 (1-99)
ー(2)野生動物と家畜 (100-149)
ー(3)野生動物と人間 (150-199)
ー(4)家畜 (200-219)
ー(5)その他の動物 (220-299)
2.本格昔話 (300-1199)
ー(1)魔法の話 (300-749)
ーー①超自然的な敵 (300-399)
ーー②超自然的なまたは魔法をかけられた配偶者またはその他の近親者 (400-459)
ーー③超自然的な課題 (460-499)
ーー④超自然的な援助者 (500-559)
ーー⑤超自然的な品物 (560-649)
ーー⑥超自然的な能力または知識 (650-699)
ーー⑦その他の超自然的な話 (700-749)
ー(2)宗教的な話 (750-849)
ーー①神の祝福と罰 (750-779)
ーー②明るみになる真実 (780-791)
ーー③天国 (800-809)
ーー④悪魔 (810-826)
ーー⑤その他の宗教的な話 (827-849)
ー(3)短編小説的な話 (850-999)
ー(4)愚かな悪魔の話 (1000-1199)
3.笑話・逸話 (1200-1999)
4.形式譚 (2000-2399)
ー(1)数字、物、動物、または名前に基づく話 (2000-2020)
ー(2)死に関する話 (2021-2024)
ー(3)食に関する話 (2025-2028)
ー(4)その他の出来事に関する話 (2029-2075)
5.その他(どれにも分類できない昔話) (2400-2499)
ー(1)牛の皮一枚の土地(2400)
引用元:wikipedia(アールネ・トンプソンのタイプ・インデックス)

 

かんたんにいえば、世界中の人気作家さんがモチーフにしたもので、とりわけ大衆にヒットした題材の共通点をリスト化してみたものですね。

 

たとえば、いつの時代も『天使や悪魔』といったモチーフは、大衆に受けやすいものです。「モチーフ≒テーマ」とすると、こういった既にどんな世界観かわかってるんだけど、安心して楽しめるよねという作風にしやすい傾向があるようですね。

 

ただし、「アールネ・トンプソンのタイプ・インデックス」というのは、いささか実用するには本格的過ぎるので、また別の記事で現代日本版のタイプ・インデックスをご紹介することにしたいとおもいます。

 

ちなみに、これをキャラクターの属性に対しても同様に行ったものを「元型(アーキタイプ)」といいます。

 

モチーフ≠テーマのメリット&デメリット


それでは、逆にモチーフ≠テーマの場合についても見ていくことにしたいのですが、少し長くなってきましたので端的に述べることとしましょう。

 

とてもシンプルです。メリットは独創性や自由度が高い作品を作れることで、デメリットは読者に必ずしも受けるかわからないというところです。

 

ここまでをまとめると「モチーフ≒テーマ」であれば大衆向けの薄利多売ビジネスモデル、「モチーフ≠テーマ」であればニッチ層向けの厚利少売ビジネスモデルが向いているでしょう。

 

どちらのビジネスモデルも一長一短ですが、自分が適しているビジネスモデルを把握しておくことは個人で稼ぐときに精神的な安寧(収益計画の実現性)を得るために重要な要素になると思いますので、しっかり押さえておきましょう!

 

可能であれば、両方バランスよく書けるのが良いかもしれませんね。薄利多売から厚利少売へ自己完結的に送客できるようになりますから。

 

一粒で二度美味しい戦略


とはいえ、長編をいくつも完結させるのなんてクソほど大変なことはよくわかっていますから、もう一つの戦略をご紹介して終わりにしたいと思います。

 

モチーフの扱い方がうまい作品としては『魔法少女まどか☆マギカ』があげられるでしょう。『魔法少女』という人気モチーフを用いながらも、悪者をやっつけるというテンプレ的な展開から脱却させています。

 

つまり、物語は一つだけど前半と後半で題材の中心が「モチーフ(魔法少女)」から徐々に「テーマ(残酷な運命への抗い)」へ移動していっているように作品ができているわけです。

 

普段の生活でも、ふと目に入った可愛い表紙イラストをみて書店に入ったのはいいけれど、書店を出る頃には参考書を買っていたなんてことないですか?薬局が店舗の入り口側にお菓子を配置するようないわゆる「ついで買い」を誘う戦略ですね。

 

 

まとめ


まとめです。

 

小説や物語におけるモチーフ(仏:motif)とは、「北欧神話」や「魔王と勇者」といった創作者の感性を刺激して制作の動機となる素材や考え方のことを意味する言葉です。

 

物語によって「モチーフ≠テーマ」となっている作品と「モチーフ≒テーマ」となっている作品があるようですが、作品を大衆向けするものにしたいかコアなファン層向けにしたいかによって使い分けると良いでしょう。

 

また、冒頭で用いる題材に人気なモチーフ「キャラクター」、「世界観」、「ストーリー(例:闘病記録等)」を起用したのち、後半は題材の中心をテーマに(主に起承転結の転を用いて)すり替えていくのも得策でしょう。

 

個人的には、妖怪がモチーフになっているような作品とかも好きだから、増えてほしいんですよね。狐火とか狛犬さんって可愛くないですか?(笑)

 

ちなみに、妖怪系の題材については『幻妖物語』というアプリゲームの世界観が参考に出来るかと思います。

 

暇な時にでも、チラ見してみて狛犬の魅力がわかったら更に掘り下げて狛犬の古典や文献を漁っていくという風にすると、面白いアイデアが続々と見つけられることでしょう!



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