ご都合主義の意味とは?
ご都合主義(英:opportunism)とは、事前に定めておいたストーリー展開が上手くいきそうもない時に、「キャラクターが言いそうも無い言動」や「超常の力」を用いるなどして、読者からすると無理やりストーリーを軌道修正されたように見えてしまう展開のことです。
日本においては「ご都合主義」というと、往々にして悪い意味で作品を批評する際に用いられ、技法として良い評価を受ける場合には「お約束」や「デウス・エクス・マーキナー(羅: deus ex māchinā)」など別の言葉に置き換えて表現されることもあります。
ご都合主義の最大の問題点は、作者が読者目線に立てていないと判断されてしまうことでしょう(※作者が読者のことをどれだけ考えていたとしてもです)。
「もちろん、ぼくだって読者目線に立っていろいろ考えてるよ!」と言いたくなる方も、いらっしゃると思います。
気持ちは痛いほどわかりますが、これは「事実がどうか」という問題ではなく「魅せ方」の問題なのです。
それでは、どういう物語構成を行えば「この作家さんは読者目線に立ってくれている!」と読者から感じ取ってもらえるようになるのでしょうか?
具体例と一緒に、その辺をスッキリさせていくことにしましょう!
ご都合主義を起こさない方法について
ご都合主義といっても、たくさんの種類があります。ケース別にみていくことにしましょう!
1.設定を説明するためだけのサブストーリー
『小説においてキャラクターの説明や人物紹介をするコツ!』という記事のなかでも紹介しておいたのですが、設定が多いSF作品や、登場人物が多い作品においては、設定を説明するためにサブストーリーを設けることがよくあります。
小説においては特に、地の文(セリフ以外の文)に説明をだらだらと書くなと言われることがありますが、これを真に受けて一切の説明を書かないようにすると、設定を伝えるためだけの場面(描写)が必要になるという副作用を作者は抱えることになります。
なぜ「副作用」と表現しているかというと、サブストーリーが肥大化しすぎてメインストーリーから大きく脱線してしまうケースが、多発するからでしょう。
これはまさに、読者からすれば作り手の事情による「自己中心的なサブストーリー展開(=ご都合主義)」の温床となり得ます。
会話で例えるとすれば、相手が魅力を感じている「ある物語」を語るために、事前に説明しておかねばならないことばかりを延々と聞いているような状態です。
いつまで経っても本題に入らなければ、なんとも自己中心的で聞いてて、つまんない話だとおもってしまいそうじゃありませんか?
作者からすれば「その魅力的な部分というゴール」が最初から見えていますから良いのですが、読者からするとそこが見えてないので、おあづけ期間があまりにも長いと離脱したくもなるというものです。
こういった設定に関する説明文の扱い方だけで「読者を魅了する話」であったはずの物語が、いつの間にやら「作者に都合の良い話」になっていることもよくあるというわけですね。
このケースの回避方法については、先述の記事を参考にして解決してみてください!
2.「設定の説明不足」と「過剰な説明」によるご都合主義
前節は「説明文の扱い方」に関する失敗が招くご都合主義についてのお話をしておきましたが、次は「設定の説明不足や過剰すぎる説明」によって起こるご都合主義についてお話していくことにしたいと思います。
やはり、人によっては頭が良すぎて一般人からすると思考を飛ばしすぎていると言われたり、常識に対する意識が強く、自分以外が持つ常識に対して順応できないタイプの方も多かれ少なかれ、いらっしゃいます。
そのため、作者なりに読者のことを考えて説明していたつもりだったのにも関わらず、よくよく原稿を見てみると読者から必要と言われるような情報が欠落していることもよくあります。
そういう場合は、過剰な説明を心がけると良いでしょう。説明不足よりは遥かにマシです。具体的な方法については、『プロットの書き方』における物語の進行速度のパートで説明しておきました。参考になれば幸いです。
また、逆に「回収されていない伏線」や「最終的に物語において必要ではなかった設定」が残されたまま放置されていることもあります。ほとんどの場合は、推敲不足だと言えるでしょうね。
不要な部分を削除するという意味では、推敲を重ねれば必ず物語の質が上がることが保証されているといっても過言ではないので、是非やりましょう。勝ち戦です。
3.物語世界におけるリアリティについて
「文章表現」によって引き起こされるご都合主義、「プロット」によって引き起こされるご都合主義と来ましたので、続いては「舞台設定」によって引き起こされるご都合主義の説明をすることにしましょう。
「リアリティ」という言葉と「舞台設定におけるご都合主義」は、切っても切れない関係といえるでしょう。
たとえば、大好きな親を主人公に殺された少女が、そのこと知りながら主人公ハーレムの仲間入りをするといった展開を考えるとしましょう。
現実世界を舞台に考えたら、普通におかしいですよね。そんな事が起こるはずがないんです。何の工夫もなしに書けば「リアリティが無い」だの、「ご都合主義おつ」とでも言われておしまいでしょう。
とはいえ、物語の舞台は現実世界ではありませんから「そういう世界観の作品なの!」と言われると、ぐうの音も出ないというものです。
たしかに、感覚的にはなんだかおかしい気もしますが、事実として「魅せ方」によっては再現可能なものもあります。
たとえば、「その少女が、大好きな親から虐待を受けて、いつ死ぬかわからない状態だった」といった非日常的な世界観設定があればどうでしょうか?
もしくは、親は生きているようにみえますが、仮に心は悪魔に既に食い殺されていたとしたらどうでしょう?
先ほどと一転して、なんだか腑に落ちるストーリーにできそうな気がしてくるというものです。
というのも、実は作者が「世界観」と「舞台設定」の役割を取り違えてしまっている場合に、ご都合主義が発生することがあるのです。
一言でいってしまえば、舞台設定にはリアリティが求められ、世界観設定にはリアリティは求められないので、ぶっとんだ設定というのは世界観設定に寄せてあげるべきというお話です。
逆に言えば、ぶっとんだ舞台設定をするとご都合主義に発展する可能性が出てくるので気を付けておきたいところですね!
といっても、世界観と舞台設定の違いをわかっていないと、なにをいっているのかマジでわけわかんねぇっていわれてしまいそうなので、その違いについてはこちらの記事に掲載しておきました!参考になると幸いです!
4.キャラクター造形不足によるご都合主義
キャラクター造形において「ご都合主義」というと、キャラクターの行動に一貫性がなく、言動に説得力を欠いてしまっている状態(いわゆる、キャラぶれのこと)を指します。
こちらは単純に、キャラクター設定の掘り下げが甘くなってしまっている状態といえるでしょう。掘り下げ具合に関しては、ジャンルによっても差があるようなので、以下の記事を参考にしてみてください!
▼キャラクターの内的造形とは?
まとめ
まとめです。ここまで見てきた通り、ご都合主義といっても沢山の種類があることがよくわかっていただけたのではないかと思われます。
文章表現、プロット、世界観&舞台設定、キャラ設定のどれとも関わってくるので、初心者にとっては非常に難題のように感じるかと思いますが、一つ一つ問題を切り離して考えてあげると解決しやすくなります。
また、中には「プロット」と「世界観」を組み合わせたときに発生するご都合主義というものもあります。
ドラえもんで例えるとすれば、「のび太くんが困っても、ドラえもんはすぐにひみつ道具を差し出さない」というルール(舞台設定)のようなお決まり展開がありますよね。
仮に、このルールが無ければ、のび太はドラえもんの道具で怠惰な日々を送るだけになります。さぞつまらない作品になってしまうことでしょう。
このように、読者がストーリー上の枷をどう掻い潜るかという所に「期待」していたりすることがあります。そんなときに、反則技でクリアされても面白くないのです。
これは、先程述べておいた対処法である「過剰な説明」を加えたとしても焼け石に水というものでしょう。むしろ、作者の言い訳といわれかねません。
このように、プロット・デバイス(枷など)と呼ばれるものたちによるご都合主義も存在しているので、プロット・デバイスについては少しかじっておくとためになると思いますよ!
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