プレミス(premise)とは?
『プレミス(premise)』とは、物語をたった一文(文中に動詞は一つのみ)にまとめたもののことです。
日本語への直訳は『前提』となります。ログラインという言葉と同じ意味です。
あまりにも知られておらず悲しい事実なのですが、この「プレミス」こそが物語創作の最重要設定であり、この時点でプレミスが無い作品は、そもそも物語ですら無いか駄作であると即決で烙印を押されることになります。
ハリウッドでは、数多の作品の中から良作を見つける技法として、プレミスをかなり重要視しているそうです。面接でいうところの履歴書審査みたいなものですね。
ちなみに、独創的なプレミスは称賛される傾向にあり「ハイ・コンセプト」と呼ばれていたりします。
プレミスが無い、またはツマラナイ場合は悔しいと思われるでしょうが、その後どれだけ文章を書き連ねたとしても良作と世間で判断されることは無いでしょう。
それほど、物語創作において重要な要素なのです。名探偵コナンであれば「体を幼くさせられた名探偵が事件を解決していく物語」というのが概ねプレミスに相当します。
また、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品をたとえにすると「感情を持たない少女が、愛を知るまでの物語」というのがプレミスといえるでしょう。
プレミスはPV(プロモーション・ビデオ)などで利用される場面も多く、読者の購買意欲に大きく関係してくるので、出版時の収益を考えた時も外せない要素となるでしょう。
ご参考:ヴァイオレット・エヴァーガーデンのプロモーションビデオはこちら!
目次
> 物語創作におけるプレミス決定のルール
> プレミスは必ず一つ!
> 数珠つなぎ方式のプレミス
> 手塚治虫先生-直伝[ストーリーまんがの原則]
> プレミスがないものは、物語ではない
> なぜ、そこまでプレミスが重要なのか?
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物語創作におけるプレミス決定のルール
一般的にプレミスというのは、「どんな人が、どんな過程を経て、どうなる物語なのか?」が、わかれば問題ありません。
ただし、プレミスには動詞が一つだけである必要があります。これは、話にまとまりがなくなってしまうからです。
例えば、「主人公が働きたいけど、同時に働きたくない物語」のようにすると、物語の結末が明確に定まっていないことに気づくことができます。
それどころか、これを察した時点で読み手は不協和音のように感じ、読む気を完全になくすでしょう。
これは動詞が二つあるからです。もしプレミスにするのであれば「主人公が、働きたくないと嘆く物語(例:おそ松さん)」か、
「主人公が働くまでの物語(例:あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない)」というように、動詞を一つに絞る必要性があります。
「おそ松さん」テイストの「あの花」のような作品があるとしたら、それはそれで気になるものですが(笑)
プレゼンと似ていますよね。あれもこれも伝えていると、聞き手は結局何の話をしているのかわからなくなるというところだけは、確実におさえておきましょう。
ひとつに絞って繰り返し深掘りしなければ、なかなか読者には言いたいことが伝わらないものです。
プレミスは必ず一つ!
また、先述のようにプレミスを接続詞や構文で結んだりしているケースのみだけではなく、プレミスを複数持つ物語を創ろうというのも辞めたほうが良いでしょう。
スピンオフや二次創作、ゲームシナリオによる展開分岐があるというのであれば話は別です。
よくある失敗として、自分好みの設定をたくさん詰め込んだ後、読者に伝えたいこと(プレミス)が乱立してしまい、収拾が付かなくなってすまうケースが想定されます。※特にファンタジーで起きやすいです(経験談)
これはプレミスが定まっていないか、複数あるからです。必ず一つに絞りましょう。完結できない要因になります。
数珠つなぎ方式のプレミス
プレミスは本来一つですが、解釈によってはメインプレミスとサブプレミスへ分解することができます。
特に長編作品に多いのですが、ミニエピソードのような物語がいくつも引っ付いている作品ってみたことないですか?
『週刊少年ジャンプ』(集英社)に掲載されている 空知英秋 先生作の『銀魂』なんかが、良い例ですよね。
『銀魂』の話数をよく見ると、第○話ではなく。第○訓と名打たれていることがわかると思います。
教訓の「訓」ですよね。正確なプレミスというのは、作者のみぞ知るものですが、これを見るに教訓をコメディーチックに伝えるというのが、メインプレミスのようですね。
そして、第△話から第✖話までは、ちょめちょめ(この部分が、サブプレミスです)という教訓について書いたものにしよう。というように、
メインプレミスを伝えるためのサブプレミスで短編を作成し、数珠つなぎにしている作品は多いです。
これは作品が長くなれば長くなるほど、書き直しの影響が甚大なリスクになってしまうことへの対抗措置となります。
メインプレミスへの影響力が少ないサブプレミスは、編集する段階でメインプレミスから逸脱しているか個別に判断して削ぎ落とせるというわけです。
ちなみに、これは漫画界の巨匠である手塚治虫氏が手掛けている漫画の書き方の中でも、紹介されている手法です。要するに、話に一貫性が保てていることが大事なのです。
▼ 手塚治虫 先生 – 直伝[ストーリーまんがの原則]
衝動から来るプレミスを掘り下げて、自分なりの物語の必要性を見いたすことができれば、手塚治虫氏のストーリーまんがの原則でも右の木みたいになれるのではないかと思うのです。 pic.twitter.com/zpntFQgbhj
— 管理人🍁らぴ【作家の味方】 (@kazakiribana2) December 16, 2019
プレミスがないものは、物語ではない
よく「小説が、どうすればもっと読んでもらえるようになるか?」という質問をいただくことがあるのですが、「小説家になろう」などのweb小説投稿サイトに投稿されている作品には、このプレミスがない or 複数ある作品が散見されます。
「物語」とは、文字通り作者が読者に対して物事を語るわけなのですが、「プレミス」がないということは読者に伝えたいことが、頭の中で整理されていない状態を意味します。
つまり、作者ですら何を伝えたいのかわからないぐちゃぐちゃな思考を、読者に伝えることになるのです。これで、読者が共感できるはずがないのです。
よく「一話切りにあう(=文字通り、一話で読むのを辞められる)」という言葉を聞きますが、大抵の場合は一話を読んだ時点で読者がプレミスを貰えなかったことに、起因しているのではないかと思うんですよね。
なぜ、そこまでプレミスが重要なのか?
ここまでの話を踏まえて、改めてプレミスが重要である理由を整理しておきます。
- 話に一貫性があるか判断しやすく、審査し易い。
- 読者が試し読みした時に、理解し易い(=収益に繋がり易い)
そして、もう一つ。プレミスを決めて置くことで、最も恩恵を受けるのは「完結し易い」ということでしょう。
先述の通り、プレミスが複数あると話に収拾がつかなくなりがちだというお話をしましたが、実はそれだけではありません。
端的にいえば、事前にプレミスに書き上げるだけの「必要性」を持っていれば、ほぼ必ず完結できるというメリットです。
詳細は『小説が書きたいけど書けない本当の原因とは?』で説明しています。
もし、長編の完結に困っている方は、一度騙されたと思って参考にしてみてください。
さて、「プレミス」が理解できただけでも、かなり上出来です。続いては、実際に「テーマ(お題)」から物語を書こうとするときに、悩みづらくなるようなTipsをみていくことにしましょう。
▼ テーマ(お題)の取扱い方について
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