小説・漫画に使える『箱書き』の意味と書き方!
小説を書いていると、『箱書き』という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
本来は小説というより、脚本・映画の世界で用いられることが多い手法なのですが。
意味は、以下の通りです。
◆ 箱書き
箱書きとは、物語に登場してくる場面一つ一つに、「5w1h」の情報を詰め込んだ箱を用意して、場面を管理する手法のことです。
※ちなみに、「5w1h」とは、Who(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)をまとめて指し示す言葉のことです。
『箱書き』を脚本ではなく、小説に転用する場合は、単純にそのまま取り入れると失敗する可能性がかなり高くなります。
その理由は、前回の記事(小説の文章に「5W1H」を使うべきではない!?|その意外な理由とは?)をご参考ください。※戻ってこれるようにしています。
結論から言えば、小説に箱書きを転用する場合。
箱の中には「5w1h」を入れずに「地の文(の元になるモーション・説明)」を入れていきましょう!
▼『地の文』の説明を未読の方は、こちら!
目次
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『箱書き』の具体例
それでは、具体例からみていきましょう!
今回は「朝起きる場面」という想定で、『箱書き』の具体例を作ってみました↓
例:「朝起きる場面」で起こる出来事一覧
- ベッドで目を覚ます。
- 鳥のさえずり声が聞こえる。
- やわらかい毛布の感触を確かめる。
- 幼馴染に優しく起こされる。
まず、主人公が「朝起きる場面」を描きたいとすると、上のように起こりそうな出来事を列挙していきます。
このリストの一つ一つこそが、後に「地の文」となっていくことになります。
このように、各場面に対して文章を書き始める前に「地の文」のリストを作っていくと、テンポを崩すことなく書き進めることができるようになるでしょう。
ただ、ここで一つ問題が発生します。それは「リストアップする出来事として、何を選定すれば良いのか?」というものです。
リストアップのコツとは?
先述の通り、箱の中には「地の文」の元となってくれる、説明したい「キャラクターのモーション」や「設定」を書き込んでいくわけなのですが。
この時、箱の中になんでもかんでも入れれば良いというわけでもありません。ある程度、取捨選択していくコツがあるんです。
端的に言えば、「作者が何を説明したい場面なのか?」によって決めると良いでしょう。
具体例で、私が読者に伝えたかったことは「爽やかで至福の朝」という設定でした。そのため、朝の心地よさの部分だけ、ピックアップしています。
※作品によっては、これがサブプレミスになることもあります。
▼具体例をもう一度見返してみていただけると、なんとなく「爽やかさ」を意識しているのが伝わるかと思います。
例:「朝起きる場面」で起こる出来事一覧
- ベッドで目を覚ます。
- 鳥のさえずり声が聞こえる。
- やわらかい毛布の感触を確かめる。
- 幼馴染に優しく起こされる。
つまり、説明したいキャラクターの設定や、世界観の設定ではなく、「その『魅力の方』を、伝えていく」ように心がけて選ぶというのが、ポイントなんです。
これは「読者を喜ばせるための場面」なのか、「読者に心地よさを感じさせるための場面」なのか、「ストーリーを次に進めるために、読者に説明する場面」なのかといった感じです。
「読者に〇〇して欲しい場面」という端的な形で、各場面を一つずつ整理しておくと良いでしょう。
このポイントを半ば無意識におさえていくコツは、「この文章を読んで、感想を書く人がいる」と思い込むことです。
どうしても説明が根性論みたいになってしまうのですが、一度試してみてくれると多分わかってもらえるのではないかと思います(笑)
ここまでが、『箱書き』を使って場面ごとに書くことを整理していく具体的な方法です。※もちろん、人によって違う使い方も全然たくさんあります。
また、テンプレートとしては「小説家専用エディタツール(無料)のNola」を使うと便利ですよ!
小説の『箱書き』に「5w1h」を使うとこうなる!
続いて、従来通り「5w1h」を使用しようしたときに、どんな問題が発生していくのかも確かめておきましょう。
「朝起きる場面」における5w1h
- 誰が…主人公である自分が
- いつ…朝
- どこで…自宅で
- なにを…人体を
- なぜ…生理的に人間というものは起床行動を行う習性があるため
- どのように…普通に
いやいや、おかしいでしょ!普通に読みにくいわ!(笑)
てか、とっくの昔に「人間が起床行動を行うこと」は知ってる!!
とまぁ、こんな感じになるわけです。場面の区切り方にもよっては、無理やりひねり出すことも出来なくはないですが。ほとんど無意味でしょう。
わかりきったことを書く必要はないからです。むしろ、読みにくさを助長する種になります。
実は、婉曲表現の解説(別タブです)のときに、例文D→例文Eでは、「寝具の上で」の部分をしれっと省略しています。これも同様の理由です。
説明不足も問題ですが、説明しすぎも問題ということですね。
また、説明しようとすればするほど文中に「名詞」が増えていく傾向があります。
名詞が多いと日本語の場合、漢字が増えていくので、字面的にも読みにくくなっていくこともありえます。
このように、使えない場面が頻繁に出てきたり、人によって使えない時点で、初心者向けのフレームワークとしてはおすすめできないのです。
加えて、小説で箱書きを本格的に利用するのは、一度作品を最後まで書き上げた後の方が良いでしょう。
人にもよりますが、小説の場合「箱書き」は編集と推敲のフェーズ(=ある程度書いた後)で、ようやく利用した方が完結しやすくなると思います。
※完璧主義に陥りやすいポイントであり、箱書きを細かくしすぎて満足してしまうことがあるからです。
先に作るとすれば、物語の大枠である「プレミス&サブプレミス」や「ストーリー」の方が良いでしょう。
▼ 物語の基礎『プレミス』の解説は、こちら!
『箱書き』ができたら描写を修正してみよう!
ある程度文章を書いた後、『箱書き』に各場面で起こる出来事を整理したあとは、地の文に修正を加えていきます。
そのときの具体的な方法論については、描写力の鍛え方のパート(以下の記事)で、ご紹介しているので、参考にしてみてください!
▼ 『描写』の書き方をマスターしよう!
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