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リズム感のある小説の書き方!テンポの良い文章を作る|レトリック講座vol.10~vol.11

 

テンポの良い文章を作るコツ!

 

文章をリズミカルに書くためにはどうすればいいのだろうか?調べてみると、思いのほか奥が深いことが分かったので共有しておきたいと思う。

 

まず、これは有名な話なのだが、日本語における文章のリズムは文末に出て来やすい傾向があるとされている。小学校や中学校の頃、「です・ます調」と「だ・である調」を使い分けるように、と習った覚えはないだろか。これは文尾を揃えることによって、文を読みやすくする一種の工夫なのである。

 

このように、文章におけるリズムを理解するためには「韻文(いんぶん)」という文体について改めて理解を深めておくと良いだろう。まず、日本語の文は大きく「韻文(いんぶん)」と「散文(さんぶん)」に分けることができる。韻文とは、その名の通り韻を踏んでいる文のことであり、今回我々が描きたいリズミカルな文のことを指している。

 

対して、散文は韻文と対をなす文。つまり、リズムのない文と考えて、差し支えないだろう。というわけで、もう少し「韻文」について、分解して考えていくことにしよう。

 

韻文(prosody)

 

韻文(プロソディ)は、その特徴から「頭韻(とういん)」と「脚韻(きゃくいん)」、「音数律(おんすうりつ)」に分解することができる。他のサイトにわかりやすいものが、あったので以下の図を拝借することとした。

 

引用元:韻文(別名:韻律)

 

それではひとまず、「頭韻(とういん)」の例から見ていくことにしよう。

頭韻の具体例:「を迷っているんだ?も考えていないくせに」

 

頭韻(とういん)は、文頭に同じ音を繰り返すことによって文にリズムを作り出すレトリック(修辞技法)のことである。上記の例文で「何」という音を二度繰り返すように、文をリズミカルに演出することができるのだ。

 

続いて、脚韻(きゃくいん)の例も見ておこう。

具体例:「見ざ。聞かざ。言わざ

 

脚韻(きゃくいん)も、頭韻と然程変わらない。つまり、文尾に韻を踏んでいれば、それはもう脚韻なのである。脚韻は、しばしば列挙法と共に用いられることがある。

 

列挙法については過去の記事も触れたが、要するに「同じ事柄に対して、言葉を繰り返すレトリックのこと」である。せっかくなので、少しだけ例をあげておこう。

脚韻と列挙法の併用例:「私は、どれだけ彼女に頼ってしまっていたのだろうか。その風に揺れる薄生地。その懐かしさを覗かせる輪郭。そして、その瑞々(みずみず)しい瞳。」

 

後半の3つの文では「彼女」に対する説明が繰り返されている。これが列挙法であるが、いずれの文末も「に」で終わっていることがわかるだろう。脚韻と列挙法は度々、併用されるので覚えておくと良い。

 

このように、日本語の文章は、文頭や文尾の音を揃えることによって、ある程度リズミカルにすることができる。これら一連の技法のことを「押韻(=おういん)」と呼ぶのだが、名前は別に覚えなくても差し支えはないだろう。

 

続いて、音数律という言葉についても触れておこうと思う。音数律とは、短歌や俳句を代表とする5音や7音を利用してリズムを整える技法のことである。音読してみるとわかるが、5音と7音は日本語においてかなり読みやすい。

 

その典型例として擬音語(オノマトペ)が挙げられるだろう。日本における擬音語には、「ドスドス」といった4音や「ドスンドスン」と言った6音が多いことは自明の理である。これは1音の助詞を伴って、5音と7音となるためではなかろうか。

 

つまり、「ドスドスと」や「 ドスンドスンと 」といった 5音と7音となって、文中に登場することが多いのである。これが「音数律」を最大に活用した韻の踏み方になるだろう。歌詞なんかにも用いられることがあるので、好きな曲の歌詞を読み返してみると面白いかもしれない。

 

喚体句(Exclamation)

 

さて、文章のリズムに関するレトリック(修辞技法)体言止めの一種である「喚体句(かんたいく)」についても、ご紹介しておくことにしよう。

 

喚体句(かんたいく)とは、通常の文が「主語ー述語」という語順であるのに対し「述語ー主語」のように順序を逆転させて、主語で文末を飾るレトリック(修辞法)のことである。

 

百聞は一見に如かず。例文を見ていくことにしよう。

例文.1

  • 平文「花は美しい」
  • 喚体句「美しい花よ」

 

喚体句(かんたいく)は、感動や希望を表現することが多く、「感動喚体句」と「希望喚体句」にわけることができる。つまり、小説においては「出来事に対する登場人物の台詞」や「ファンタジー作品における祝詞や詠唱呪文」として活用することが出来るだろう。

 

喚体句は、山田文法における用語なので詳細については、そちらに任せることにしたいが興味がある学徒は調べてみると良いだろう。尚、この記事では喚体句によって文がリズミカルになる典型例をタイプ別にまとめて締めようと思う。

 

喚体句の類型

 

A−1 逆述語タイプ
A−2 「(~の)-こと」タイプ
A−3 「~の-さ」タイプ
A−4 形容詞語幹・形容動詞語幹タイプ
A−5 形容動詞連体形タイプ

引用元:日本文芸研究57-2(よこ)

 

1.逆述語タイプ

「主語に対する感想+主語」の形を取るもの。

具体例:「かわいくねぇなぁ、おまえ」

2.「(~の)-こと」タイプ

「主語の状態+~こと」という形で構成されているもの。

具体例:「あら、めずらしいこと。今日はどうされました?」

3.「~の-さ」タイプ

「主語+の+形容動詞(~さ)」の形式をとるもの。

具体例:「見ろよ!めちゃくちゃな速さ!」

 

こちらはアニメや映画の台詞を書き取っているとたまに目撃する感動喚体句である。指をさした方向へ、読者の意識をスーピーディーに誘導するような高等演出技法の一種として活用できる場面は意外とあるだろう。

 

4.形容詞語幹・形容動詞語幹タイプ

形容詞+約物(=感嘆符や疑問符、三点リーダといった記号文字のこと)の形式を取るもの。

具体例:(雪見大福をたべて)「おいし…」

 

ちなみに、三点リーダーは偶数回使用するようにと言われるが、実はそこには明確な根拠は存在していない。「熱狂的な、三点リーダーは偶数個にしろ教徒」が、時節暴徒と化すのはもはや日常茶飯事であるが、これは文部科学省の資料を見てもわかることである。

 

三点リーダーが偶数回使用されるのは、沈黙を表現する三点リーダーが主として用いられることが考えられる。確かに、沈黙を表現したいのであれば「うん…」より「うん……」とした方が沈黙をうまく表現できる。しかし、この例外となるのが、この感動喚体句<形容詞語幹・形容動詞語幹タイプ>である。

 

「おいし…」と「おいし……」を比較すると、前者でも後者でも良い様に思える。むしろ、後者だと時間の経過が伺えるが、一瞬の感覚を表現したいのであれば前者の方が適任であろう。後者では、長い余韻に浸っている印象がどうしてもぬぐえまい。

 

文体とリズムの関係

 

さて、実は修辞法以外にも文章をリズミカルにする方法がもう一つある。 それは文体を整えることである。 文体については以前も言及させて頂いたことがあるが。

 

文体とは、すなわち「物の見方」のことであると解釈できる。そして、この物の見方が文章中でコロコロと変わると一貫性のない文章になってしまう。また、結果として語尾に「だ・である調」や「です・ます調」があべこべに登場してくることで脚韻にも影響が出るためリズムが揃わなくなるのだ。

 

この現象は、特に三人称多元視点作品(=三人称かつ、主要人物が複数いる物語)において引き起こされる。このようなことを起こさないためには、自分の文体をしっかりと把握しておくことが大切になってくるであろう。

 

ちなみに、今回は文体というものを意識してもらうため、敢て《講義体》と呼ばれる文体を使用してみた。文体とは果たして何のことなのか、以下の記事と見比べると理解の一助となるだろう。

文体とは何か?~よくわかる文体論シリーズ〜

 

諸兄の創作が軌道に乗ることに期待している!それでは、またどこかでお会いしよう。

 

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