普段文章を書く機会のある方であれば、目にする機会も多い『推敲(すいこう)』という言葉。要するに、文章をより良くすることなんでしょ?と理解しているようで
いざ手を動かしてみると、具体的に何をすれば良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
というわけで、今回は『推敲の意味』と『推敲のやり方』について初心者にもわかりやすく例文付きで説明していこうと思います。
推敲とは?
まず、推敲とは文章を書いた後、文字や語句を何度も練り直す作業のことを指します。
はるか昔、長安(中国)へ試験を受けに行く途中の賈島という詩人が「僧は推す月下の門」という詩を読んだ後、「門を推す(おす)」のと「門を敲く(たたく)」のどちらが良いか悩んだという逸話が由来とされています。
結局、門を敲く音が月下に響く様に風情を感じたため、賈島は「僧は敲く月下の門」と詩を推敲したというお話です。
このように、推敲とは文字を置き換えることで文章における風情をより良くしていくものとされています。
故事成語(大昔の出来事から出来た言葉のこと)は、成り立ち自体にストーリーがあるので語源が明確でわかりやすいですね(笑)。
推敲の具体例
それでは、もっと具体的に推敲と呼ばれる作業にはどのようなものがあるか見て行きましょう。結構パズルに似ているものなので、最初は楽しく感じると思います。
①文章を短く切れそうか
やはり、長ったらしい文章は読みにくいです。文章を分割できそうであれば、分割した方が読みやすくなるでしょう。
改善前:頭の上に、はてなマークが浮かんでいそうな顔の少女を見て所長は彼女の頭にそっと手を置いた
改善後:少女は、頭の上にはてなマークが浮かんでいそうな顔をしている。それを見た所長は、彼女の頭にそっと手を置いた。
ちなみに、コツとしては「主語の数」と「述語の数」をカウントして一致しているか確認すると良いでしょう。
主語を省略して、動作の主体が変わってしまっていないか?述語が消失していないか?といった点にいち早く気付くことができます。
②主語と述語が離れすぎていないか?
主語と述語は近い位置に合ったほうが、シンプルで読みやすいです。間にある修飾語が不要であれば消す。必要であれば代名詞を用いて、修飾文を切り離すといった工夫ができます。
改善前:機械仕掛けの青い双眸と白衣が特徴的な男は、膝元の彼女に目を落とす。
改善後(修飾語の削除):白衣の男は、彼女に目を落とす。
改善後(代名詞の活用):白衣をまとった男の双眸は、青く、機械仕掛けのものであった。彼はその目を、膝元の少女へと落とす。
③修飾語と被修飾語が離れすぎていないか?
修飾語と被修飾語についても、文章中で間が空きすぎていると読みにくくなります。出来る限り近い位置へ配置するのが良いでしょう。
ちなみに「青いバラ」という言葉を例にすると、修飾語が「青い」の部分。被修飾語が「バラ」の部分となっています。
④連続して同じ表現や語尾を用いていないか?
同じ表現や同じ語尾の文章が続くと、くどい印象を受けやすくなります。表現技法は複数パターン用意しておくなり、被った文章は削除するといった工夫ができます。
この悩みを持っているという方は、意外と文章表現力の問題ではなく文章構成力の方に問題があったりします。
詳しい話を知りたい方は、過去にご紹介した「ワンパターンな文章への対処法」を参考にすると良いでしょう。
⑤「てにをは」でミスリードを起こしていないか?
これは日本語独特有の問題ですね。そもそも「てにをは」という言葉自体、なんだったっけ(汗)という方も多いと思うので、そこから説明したいと思います。
「てにをは」というのは、日本語の助詞を使い間違えると文章のニュアンスが変わっちゃうよ~というお話です。
例えば、「今日の夜ご飯に何食べたい?」とお母さんから聞かれたとき。
「ハンバーグが良い!」と回答するのと「ハンバーグで良い!」と回答したときに、お母さんが受ける印象の違いのこと、と言えばわかりやすいでしょう。
めちゃくちゃハンバーグが食べたい時に、「ハンバーグで良い!」と書いてしまうと相手を誤解させてしまってカレーが出てくるかもしれません。これが俗に言う「てにをは」が出来ていない状態と言えるでしょう。
推敲は小説家にとって最大のチャンス
このように、「推敲」といっても多様なチェック&改善作業が存在しています。とはいえ、知識のみで勝負が付く部分ともいえます。
そのため、推敲に費やす努力は比較的報われやすいでしょう。Web小説のコンテストでも新人賞でもですが「読みやすさ」は、小説の評価を大きく左右します。
そのわりに、推敲の知識を持ち合わせていない方もかなり多いです。小説を出版したいという方にとっては必須科目なのに、です。
また、大手の出版社やプロダクションには推敲担当の方もいらっしゃいます。自費出版を主戦場として出版社と直接勝負する場合、それなりに推敲の訓練も積んでおく必要があるでしょう。
どうやったら推敲が上手くなるのか?
では、どうやったら推敲が上手く、迅速にできるようになるのでしょうか?
推敲を上手くするには練習しかありませんが、練習の機会であるか判断する知識は大前提として必要です。(つまり、この文章は改善の余地があるかどうか見定めるための知識が必要ということですね)
それに関しては、多数の作家さんを輩出している『榎本事務所』という専門プロダクションから刊行されている
▼『ライトノベルのための正しい日本語』が必携です。
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その他、「こういった切り口での推敲もあるのか」という本や他のサイトに書かれていない生きた知識については、今後も見つけ次第記事にまとめていこうと思います。
推敲の手間は想像以上にヤバイ(ヤバイ)
小説と言えば、軽く十万単位の文字数になりますよね。そこでよく考えてみて欲しいのですが、手作業で推敲しようなんてしたら確実に地獄の苦しみを味わうことになります(経験談笑)。
ましてや、機械的な計画もなしにしようものなら、ゲシュタルト崩壊して完結すら危うくなるでしょう。
そんなときは、流石にソフトに任せたほうが良いです。
フリーソフトも無いわけではないですがインストール手順すら無い始末なので(察し)、手堅く『一太郎』というワープロソフトが絶対におすすめです。
『一太郎』は、かなり有名なソフトです。ご存知の方や既にお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。基本、買い切りなので五年くらい使うとすれば月250円くらいです。
▼『一太郎』は数種類があるのですが、プレミアムが一番おすすめです。
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まとめ
まとめです。「推敲」とは、文章をより良くするため練り直すことを意味します。
そして、まずは推敲が必要なパターンを知識として押さえておきましょう。その上で、ツールなどを用いて修正作業に慣れていくと完成度も飛躍的にあがるはずです。
というわけで、ご精読ありがとうございました!
みなさんの創作物が、もっと多くの思いを生み出す日を楽しみにしています♪ それでは!
↓
≫ Lecture.7 ワンパターンな文末への対処法
≪ Lecture.5 小説家のための日本語文法基礎
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