夢落ち(ゆめオチ)の意味
夢オチとは、小説や落語のなかで語られている物語が終盤に差し掛かったあたりで「ここまでの話は、すべて夢だったんだよ」という結末が明かされるストーリー構成のことです。
古くは中国の古典『荘子』の一節である『胡蝶の夢』にも登場してきます。『胡蝶の夢』というのは、蝶々になって飛んでいる夢を見たあと、目を覚ました莊子が「わたしは本来は蝶々で、いまは莊子になる夢をみているのではないか」と解釈したエピソードのことです。
時に『超展開』や『デウス・エクス・マーキナー(ご都合主義)』の一種とされることもありますが、名作や傑作においてはメタフィクション的な技法の一種として登場してくることもあるので、一概に評価されていないわけではないようです。
ここで、メタフィクションの意味にも軽く触れておくことにしたいと思いますが「メタフィクション作品」というのは、その作品に登場してくる物語が「架空であること(=フィクションであること)」を物語のなかにおいて、示唆している作品のことです。
かんたんにいえば、物語を一文にしたときに「Aさんが『物語Bを夢で見た』という物語」となっている作品Cのことを、夢オチを用いたメタフィクション作品と呼びます。
この物語Bのことを劇中劇といい、物語Bが2つ以上ある場合は、この物語Cのことを枠物語(入れ子の枠となる物語)と呼びます。※別に覚える必要はありません。
「ひぐらしのなく頃に」や「Re:ゼロから始める異世界生活」といったループ作品や分岐シナリオ作品などもメタフィクション作品の一種とされています。
これは前回ループ時の記憶が本物かどうかということを確かめようもなく、考えようによっては夢や空想(フィクション)だったのではないかと示唆されるからです。
※ただし、通常これらの作品は「夢落ち」作品とはいいません。作中で夢であったのかどうかについては明言されていないからです。あくまでメタフィクション作品の一種と捉えることになるでしょう。
夢落ち(ゆめオチ)で有名な作品・傑作リスト
※以下、ネタバレになる可能性があるので大丈夫な方だけご覧ください!
- 不思議の国のアリス(正真正銘の夢落ち)
- ハイスクール!奇面組(夢というより空想落ち)
- 千と千尋の神隠し(夢かどうか曖昧)
- また、同じ夢をみていた(夢かどうか曖昧)
- シャーマンキング(事実上の打ち切り)
- 東京大学物語(ひねりすぎてヤバいやつ)
傑作小説・名作ストーリーにおける夢オチの使い方とは?
おおよそ、名作や傑作と呼ばれている作品における夢落ちには2つのパターンがあるようです。
「信頼できない語り手」におけるどんでん返しに使用されるパターンか、「マジックリアリズム」の一部として用いられているパターンです。
そもそも夢落ちの元祖といわれている1920年公開のドイツ映画『カリガリ博士』では、『信頼できない語り手』の技法を用いた結果の産物として夢落ちが登場してきています。※主人公が精神病棟に隔離されている患者だったというどんでん返し的な結末です。
一方、『不思議の国のアリス』や『千と千尋の神隠し』、小説であれば『また、同じ夢をみていた』といった作品も巷では夢落ち作品の代表例として挙げられることがあるようですが、これらはどれも『マジックリアリズム』といった技法を用いているという点で、夢か現実かを曖昧なままにして物語を終わらせています。
やはり、物語を終盤まで読み進めてきた読者というのは、その世界にいってみたい。住んでみたい。そういった現実世界の出来事だったらいいのになというような感情を少なからずもっているわけで、それなのにそれは全部夢でした!ちゃんちゃん!なんていわれたら腹が立つに決まっています。
おそらく、夢だったということを読者へ伝えようとするときに「もしかすると、本当は夢ではなかったのでは?」といった余韻を残してあげることが重要な要素となるのかもしれませんね。
もちろん、例外として「こんな世界は嫌だ!」といったホラーやサスペンスのようなジャンルにおいては、夢落ちというどんでん返しをすることで、恐怖から観客を救い出す効果が期待できるということなのでしょう。
また、登場人物が夢の中で過ちを犯していた場合、あえて悪夢としてみせつけることで、教訓を示すという構成を創り出すこともできるようです。
さて、というわけで今回は物語創作において「夢落ち」は、どのように用いられて、どのような効果をもたらすのかというお話でした!
具体例に出していた「また、同じ夢をみていた」も面白いので、是非読んでみてください。また、「東京大学物語」の夢落ちは、めちゃくちゃ批判されたらしいので反面教師がてら読んでみるのもいいかもしれませんね。
ラスト1ページで、ただの夢オチに留まらない、とんでもない展開を用意してくれています(笑)
▼マジックリアリズムがよくわかる解説!
コメントを書き込む