マジックリアリズム(英: magic realism)
マジックリアリズム(英: magic realism)とは、現実世界と非現実的な世界との境界線が、曖昧になっているような世界観を描く表現技法のことです。
といわれても、実際に読んでみたり体感してみないと中々わかりづらいものですよね(笑)。
もっと読者目線で言ってしまえば、現実世界を舞台にした物語を読み進めていたら、いつの間にか非現実的でおかしな現象や事件が起こりはじめ、最終的にそれが現実的なものとして登場人物の日常に溶け込んでいくような展開をはらんだ作風のことです。
最近で言えば、森見登美彦先生の『ペンギン・ハイウェイ』や、住野よる先生の『また、同じ夢をみていた』といった作品が挙げられるでしょう。古典としては、ガブリエル・ガルシア=マルケスの長編小説『百年の孤独』が有名ですね。
たとえば『ペンギン・ハイウェイ』では、賢い少年が素敵な大人の女性のことをただ好いているだけの話からスタートしますが、最終的にはその女性の正体が存在すらままならない非現実的な幻想のようなものとして描かれていきます。
他にも、マギッシャーレアリスムス(独: magischer Realismus)、魔術的リアリズム、幻想的リアリズム、魔法的現実主義とも呼ばれることがあります。
マジックリアリズムは、空想(ファンタジー)と現実(リアリティ)の中間に位置する世界観を持ちつつも、SF(未来)や童話(過去)ではなく、現在を舞台としているのがその特徴といえるでしょう。
ちなみに、よくよく考えてみると「夢落ち」を用いた技法と似ているというか、ほとんど同じような演出技法になっていることがわかります。これは、夢落ちを用いた作品群のなかにマジックリアリズムを併用しているものが多いためです。
ただし、あくまで「夢オチ」というのは結末の付け方のことで、これに対し「マジックリアリズム」というのは世界観に関連する演出技法なので、組み合わせて用いられることもありますが両者はまったくの別物です。
マジックリアリズムの持つ効果と魅力
さて、小説やシナリオを描く立場からすると「マジックリアリズム」という表現技法が、一体作品にどのような効果をもたらすのかというところは気になるところですよね。
結論からいえば、マジックリアリズムには先の展開を読ませない「ミステリアスな魅力(何も考えなくても読めるといった思考放棄的な魅力)」を作り出す効果があるのではないかと思われます。
物語の構成的な話をすれば、「小説家になろう」や「少年ジャンプ」で扱われることの多い王道系の英雄譚・成長譚においては、先の展開が予測できるものも少なくありません。
これは爽快感(枷や落差を使ったギミック)で読者を惹きつけることに成功しているわけですが、その一方で「マジックリアリズム」というのは、まさに「ひねり」を使ったギミックにより、先の展開がまるで読めないミステリアスな雰囲気を作り出すことで読者をひきつけているといえるでしょう。
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ちなみに、マジックリアリズムは『シュルレアリスム(仏: surréalisme)』という言葉と同義として扱われることもあります。
しかし、後述しますがシュルレアリスム(物語内における論理的な破綻を許容する作風)というのは、「マジックリアリズム」といった作風が誕生するまでの思想や芸術運動のことを指す言葉であり、あくまで「マジックリアリズム」というのは一つの技法のことなので、全く別のものと考えておいた方が正確でしょう。
では、なぜ同義とされるのかというと少しむずかしい話になってしまうので、次の記事でわかりやすく解説しておきました。興味がある方は、ページ最下にリンクがあるので、ご参照ください。
とはいえ、マジックリアリズムを作品に取り入れてみたいと言う方は、まずは実際に作品へ接してみるところから始めてみたほうが良いでしょう。
掲載期間が終了していなければ、こちらから具体例となる『また、同じ夢をみていた』を聞きに行ってみることもできるので、おすすめです(アプリへ飛びます)。
▼マジックリアリズムの元祖である『百年の孤独』を読んでみるのも一つ勉強になるかもしれませんね。それでは、ご精読ありがとうございました!
▼ シュールレアリズムって何?
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