シャレード(charade)の意味をわかりやすく解説!
シャレード(英:charade)とは、ジェスチャー(動作)によって言葉を表現するという意味を持ち、主に映画脚本の分野において重要とされる専門用語のことです(ただし、言葉自体はあまり普及はしていないのだそうです)。
テレビや映画が登場してくる以前の時代では、演劇がシナリオや台本の主戦場となっていました。そのため、遠くの観客席まで見えるよう、役者は大げさな動きを以て表現することに努めていたと言えるでしょう。
例えば、登場人物が悲しいと思うシーンなのであれば、その人物が膝を折り地面に伏して大きな嘆声をあげると言った具合ですね。
しかし、テレビや映画においては枠(=カメラが画面に写しだしている範囲のこと)を切り取って、まるで登場人物を視聴者が間近で見ているかのような表現が可能となりました。
ここで演劇と同じように台本を動作で表現しようとすると、大げさすぎてしまいます。
もちろん、大げさにしなければいいだけの話ではあるのですが、その結果まったく別のところに映像ならではの表現技法が生み出されることになりました。
つまり、ちょっとした動作の意味するところが、映像ではクッキリ鮮明に浮かび上がってきたというわけです。
例えば、手紙を握っている手に力が入っていれば、手紙を読むのが怖いとか手紙をもらえたことに感激しているといったことを表現できたりするわけです。
他にも、ドアのノックの仕方は軽くなのか激しくなのかといった、ちょっとした動作をクローズアップして映像にするだけでも、視聴者への印象はかなり変わってくるでしょう。
これらの技法のことをまとめて『シャレード』と表現したわけですね。
『シャレード』のコツは?
新井一先生著の「シナリオの基礎技術」によれば、シャレードには3つに区分されそうだというお話でした。
①人物に対するシャレード・②場所に対するシャレード・③状況に対するシャレードの3つです。
人物に対するシャレードというのは、例えるならば「いつも自分の髪型を気にしている」といった行動によって、ナルシストっぽさを表現するようなものです。手鏡などの小道具も活用できるでしょう。
また、場所に対するシャレードの例としては「料理を切る手が震えている」といった行動によって、そのレストランがただ(映像的に)綺麗なレストランというわけではなく、登場人物にとって告白する場所であるということを案に匂わせることができたりします。
最後に、状況に対するシャレードですが、冒頭でも例に挙げておいた「ドアノックの仕方」なんかが具体例として挙げられるでしょう。
要するに、その動作が人物・場所・状況のどれを表現しているのかという違いによってシャレードを分類してみると少しわかりやすくなるというわけですね。
このように、シナリオを作成する場合は「シャレードを使って、人物・場所・状況のいづれかをもっと補足することができないか?」という観点で、常により多くの工夫を盛り込んであげると、より鮮明で風情のある表現に富んだ作品にできるのでしょう。
シャレードの小説における応用
ここまでは映画脚本についてのお話でしたが、小説においてもシャレードのような表現技法はよく用いられています。
初心者の頃によくありがちなのですが、小説本文を書いてみるとセリフと「~しました」という登場人物の行動を表現する文のみが入り乱れていたりします。ちょっと具体例を挙げてみましょう。
私はその日、朱音(あかね)ちゃんとスライムを狩りに出かける約束をしていたので、草原に来ていました。草原には、スライムがよく出没するので、朱音の欲しがっていたスライムソードの錬成にもってこいなのです。
「おーい、悠里ちゃーん! きゃー!」
早速、スライムに襲われている朱音ちゃんに愛想をつかしながらも、いつものように助けに向かいます。
もちろん、こういった文体でも別に読みやすいですし良い作品もありはするのですが、ずっとこの調子だと何か物足りなさを感じることはないでしょうか?
そこで、取りあえず約束をして待っている私(人物)に対してのシャレードを使えないか考えてみましょう。
待っているときに、私はどんな気持ちでいるのでしょう。もし「寂しい」と思っているのなら、自分の服の袖を掴んだり、寒気を感じていたりするかもしれません。
すると、以下のように文章を変えてみることもできます。
私はその日、朱音(あかね)ちゃんとスライムを狩りに出かける約束をしていたので、草原に来ていました。草原には、スライムがよく出没するので、朱音の欲しがっていたスライムソードの錬成にもってこいなのです。なんだが少し寒気を感じたので、私は着ていた紺色のローブの袖を思わずつまみます。
「おーい、悠里ちゃーん! きゃー!」
早速、スライムに襲われている朱音ちゃんに愛想をつかしながらも、私はなぜだかいつもよりも強く箒を握って、早く迎えに行ってあげたくなってしまいました。
今回やってみて思いましたが、小説でやろうとすると結構難易度が高そうですね(笑)。
ただ、なんでしょう?伝わりますかね?文章になんだか感情の彩りが付いたような気がしませんか?今回は取り敢えず、待っていて寂しいということを「袖を掴む」という行動で表現したり、会えて嬉しいということを「箒を持つ手を強く握る」という行動で表現してみました。
難易度は高くても、ハイレベルな文章を書こうとすると必須な技術なのかもしれませんね!
シャレードについてもっと詳しく知りたい方や、脚本の知識も基本からしっかり勉強してみたいという方は、新井一先生の「シナリオの基礎技術」が読みやすくておすすめです。
ちなみに、シナリオセンターの講義内容もほとんどこの本と被っているようなので、専門学校やセンターにいったらどんな勉強ができるのかを垣間見るのにも便利な、まさに脚本家の教科書といった感じですね。
シナリオライターや小説家を志望している方なら、外せない一冊でしょう。また、シャレードが思いつかないときは、「感情類語辞典」があると便利です♪
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