教養小説とは何なのか?
自分の子供には教養が身に付く小説を読んでほしい、自分自身もう少し成長するために教養を身に付けたいという方も多いのではないでしょうか?もしかしたら、自分の成長を文学作品として人へ伝えたい、残したいという方もいらっしゃるかもしれませんね。
その志だけでも非常に立派だと思いますが、そんな皆さんがもう1ステップ先へ進むために必要になりそうな予備知識や具体的な作品紹介を、今回は解説していくことにしたいと思います!
そもそも「教養小説(独:Bildungsroman)」とは、何なのでしょうか?
実のところ専門家の間でも定義や解釈が乱立しており不揃いな状態なようですが、この記事における結論をいってしまえば「個人が『いかに生きるべきか』について、自発的に考えた経過を綴られた小説」のことです。参考文献:ドイツ教養小説について(PDF)
一応、正確な解説をしておくと「教養小説」という言葉は、エストニアのドルバルト大学教授カール・フォン・モルゲンシュテルン (1770-1852)によって提唱されたものといわれていて、ドイツの哲学者ディルタイによると以下のように定義を言及されています。
青年は幸福な薄明のうちに人生に踏み入り、自分に近い魂を求めて、友情と恋愛に巡遇する。しかし、やがて世間の厳しい現実と関わざるをえなくなり、こうしてさまざまな人生経験を積んで次第に成熟し、自分自身を見出し、世界における自分の使命を自覚するようになる。
引用元:Dilthey, Wilhelm: Das Erlebnis und die Dichtung. Leipzig/Berlin 1929, S.393f.
一般的には、伝記的な様式であったりするのですが、なんともジャンルの定義にしては曖昧に聞こえるかもしれませんね。
これは教養小説が成立していった背景が、日本では馴染みのないドイツを含む西欧諸国の政治課題に起源があったからだと言われています。
日本人の方にも話をわかりやすくするために、少し話題を変えてみることにしましょう。例えば、小学校や中学校に通っている頃というのは、何のために生きたいかなんて考える人は稀ではないかと思います。
これはなぜかと言うと、幼い頃というのは親や学校先生に褒めてもらうことやテストの点数といったものが正解であることが多く、自分の外側に道徳的な判断軸が存在しているある種他人任せの状態にあったからでしょう。
これと同じことが西欧においては、経典(宗教)や階級制度、人種差別(偏見)という形で存在していました。
しかし、科学の発展や戦争・虐殺などによる社会体制の不安などにより、人々は自分自身が道徳的判断軸を持つことを迫られます。
日本では小学校や中学校から大学受験へ向けて頑張り、大学に入学したり、卒業したりする段階では受験といった社会による評価方式から一転して、自己評価(自分の強みや役割についての考え)を求められるのに似ているのかもしれませんね。
すなわち、「教養小説」というのは社会人になるタイミングなどにおいて世界における自分の役割を探す際に重宝するという、意外と大人向けな趣旨を持つ文学作品群であるという傾向に気付かされます。
したがって、子供に教養を身に付けさせたい(自分の価値観や生き方について軸を持ち、生きやすい環境を整備させたい)という思いで教養小説を読ませるのは、人生を通していえば有益になりそうですが、小学校や中学校のような教育方針がガチゴチに存在している環境下においては、教育現場との衝突などが逆に浮上してくる懸念も忘れてはいけません。
教養というのは、良くも悪くも自分で正誤を判断する能力であり、ひいては自己肯定力のことで、社会的文化における正誤とは必ずしも一致しないのです。これは時として、人種差別やジェンダーなどの社会問題へ発展することがあるようです。
おすすめの教養小説 3選!
みなさんは、給料が多くて、より世の中に大きく貢献していそうな企業に就職することが普通の価値観であり、正しいこと、親や自分に望まれるべきことだとおもいますでしょうか?
「コンビニ人間」という作品では、36歳未婚彼氏なし。コンビニのバイト歴も18年目という中々、実在しそうで本当にいるのかわからない強烈なキャラクターを持ち合わせている主人公、古倉恵子を中心として「普通とはなんだろう?」と考えさせられるような作品に仕上がっています。
あと、分量もそこまでないので結構すぐ読めちゃいます!
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。「いらっしゃいませー!!」お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。累計92万部突破&20カ国語に翻訳決定。世界各国でベストセラーの話題の書。
引用元:Amazon『コンビニ人間』
2.阪急電車 – 有川 浩
「愛情とは、どう表現すれば正しいものなのでしょうか?」人は、それぞれ性格も違えば考える前提となる育ってきた環境すらも大きく違うものですよね。
人の悩みの大半は人間関係にあると言われていますが、この「阪急電車」という作品では、とあるローカル線に乗り合わせることになる様々な人々の出会いや生き方、物語においてどんな考え方を見出していくのかうかがい知ることが出来るでしょう。
3.アルジャーノンに花束を – ダニエル・キイス
「幸せとはなんでしょう?」「あなたが幸せになるために必要なものは?」こういった問題の答えを直ちに出すことの出来る人は少ないでしょう。
「アルジャーノンに花束を」では、知的障害を持っているチャーリイ・ゴードンが主人公です。彼の年齢は32歳ですが、病気のために6歳程度の知能しか持ち合わせていなかったのですが、ある手術をすることで天才的な知能を手に入れることになります。
彼が持っていたコンプレックスや失っていた通常の知能を取り戻した先に、待ち受けていたものとは一体どんなものだったのでしょうか?
気になる作品があれば、ぜひ読んでみてくださいね♪ それでは、ご精読ありがとうございました!
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