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【悪用厳禁】燻製ニシンの虚偽(レッド・ヘリング手法)の意味と由来とは?|具体例から学ぶ論点すり替えの詭弁術

燻製ニシンの虚偽(レッド・ヘリング手法)とは?


燻製ニシンの虚偽(レッド・ヘリング手法)とは、重要な事柄から読者の注意を逸らそうとする技法の総称です。

 

由来は諸説ありますが、ナポレオンの敗北を誤報したイギリス新聞社を批判する際に、ウィリアム・コベット氏(英ジャーナリスト)が「政治的な燻製ニシンの効果は、ほんの一瞬のものでしかない。土曜には、その臭いも石のようにさめきってしまった」といった感じで、臭いものの例えとして「燻製ニシン」を登場させたことが元になっているとされています。

 

類義語に「ミスディレクション」という言葉もありますが、ミスディレクションというのは「誤った指導」といった意図せず勘違いを生み出すという意味合いや、手品・マジックにおいてのみ読者の錯誤のことを示すのに対し、燻製ニシンの虚偽というのは政治議論や演劇用語として意図して誤解を生じさせる手法のことを指します。





 

燻製ニシンの虚偽(レッド・ヘリング手法)の具体例


続いて、具体例を挙げてみようと思います。以前、別の記事で「小説や物語を書く際には、題材(テーマ)をどうやって調達すれば、やりやすいか?」というお話をしていました。その中に、信じられないくらいちょうど良い例があったので再利用させていただくことにしたいと思います。

 

【▼この記事ですね。】

小説・ラノベのテーマや物語のお題が一瞬で見つかる方法!?|コンセプトやメッセージとの違いと題材の種類まとめ!

 

上の記事の内容(一部)をまとめると、述べたかったことは以下の通りです。

記事の論旨


①テーマ(題材)というのは、短編になるほど具体的で、長編になるほど抽象的にしておくと良い。

②実際、2019年12月末に締切られている「NOVEL DAYS」超短編コンテスト(5,000文字以内)では「お正月」という具体的なお題、小説家になろう×JINKE小説大賞(15万~20万文字)では「ファンタジー」という抽象的なお題が与えられている。

 

なんとなく読んでいると「へーそうなんだ」となりそうになりますが、ちょっとまってください!?

 

実は、この②の部分が「燻製ニシンの虚偽(レッド・ヘリング手法)」の具体例でもあるんです。

 

よくよく考えてみてください。超短編のコンテストでも抽象的なお題を掲げているコンテストが無いとは限りませんよね?逆に、長編でも具体的なお題が提示されているコンテストだって探せばあるかもしれません。

 

このように、あたかも②を証拠のようにして①を正当化しようとする流れを文の中に組み込むことを燻製ニシンの虚偽と言うのです。※もちろん、悪意なしに無意識で使ってました(笑)

 

つまり、注目させたい論拠があるとき、その論拠を補強するもので一見「そういえば、たしかに!」と思えるけれども、実のところ別の解釈がいくらでもできるもの作っていけば、人は騙されやすいということです。

 

あ、でも具体例の②部分は消してみても別に「①の主張が間違っている」ということにもならないので安心してくださいね?まぁ、逆に言えば正しいかどうかわからないものを正しいように感じさせているという意味では、悪手ですけど(笑)。

 

このように、書き手にたとえ悪意を持っていなくても、ふと気を抜いて文を書くと「燻製ニシンの虚偽」を使っていることだってあるのです。

 

これに対抗する一つの方法こそ「データ分析」と言えるでしょう。例で言えば、実際に100人の作家さんに具体的なお題と抽象的なお題の短編と長編を合計4作品かいてもらって、作品を書き上げるのに要した時間の平均や中央値を比較すれば良いというわけです(※実現可能かは別問題ですが)。

 

他にも、議論している内容ではなく人物に対して人格攻撃をしたり、「私はこう思う」というのに対して「なんで?」を疑問を投げ続け、言葉の定義が曖昧なところをやり玉にあげるような方法などがあります。

 

燻製ニシンの虚偽(レッド・ヘリング手法)の使い方


悪用されやすい技術なので扱いに注意してほしいのですが、物語創作にも関わってくる話なので引き続き、使い方についてお話していこうと思います。

 

先述の通り、燻製ニシンの虚偽というのは重要な事柄から「注意をそらす」ことを目的としているだけなので、そのバリエーションは結構あるようです。

 

誰から見ても怪しさ満点な犯人を用意して「本当にこいつが犯人なのか?」という議論を繰り広げてもらい、「犯人が実は二人いた」といった事実から読者を逸らそうとするようなミステリーなんかも燻製ニシンの虚偽によるトリックですね。

 

また、主人公が最短経路でサクサク魔王を倒すストーリーも面白いものですが、主人公の勘違いによって大きく遠回りをするような物語というのも魅力があるものです。

 

たとえば、主人公へ長老たちが「意思の力」が何よりも大切じゃと主人公に教えていて、その主人公は魔王を倒すために友人まで捨てて「もっと意思を強く持たねば!」と壮絶な鍛錬をしていたとしましょう。

 

そんなある日、主人公は魔王に全然歯が立たないことが発覚してしまいます。剣では敵わないことを知った勇者は諦めかけるわけですが、なんだかんだ放浪する間に仲間ができていきます。

 

そして、魔王を倒せるようになるわけですが「意志の力」という言葉の意味が、実は「自分の覚悟」という意味ではなく「同調されるような意思には大勢を動かす力がある」という意味だったことに気付かされて物語が終わるといった展開ですね。

 

こちらも問題に集中する余り、前提が誤っていたことに気づけなかったパターンと言えるでしょう。

 

このように、ミステリー作品以外においても「燻製ニシンの虚偽」というテクニックは平然と利用できるので、論理的な筋書きを得意とする作家さんには便利なツールになってくれることでしょう。

 

そろそろ叙述トリック編や弁論術編に入っていきたいものですね!

 

ちなみに、叙述トリックは重要な事実を伏せるのに対し、燻製ニシンの虚偽はどうでもいいことを重要に見せて事実から注意をそらすという違いがあるようです。

 

それではまたお会いしましょう。ご精読ありがとうございました!





 

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