エッセイ(随筆)と小説の違いとは?
エッセイ(随筆)と小説の違いは、エッセイがノンフィクション、小説がフィクションという違いに加えて、エッセイの場合は筆者の思想・感想が主題であるのに対し、小説の場合は物語が主題であるというところです。
また、エッセイは語り手が必ず筆者自身とイコールになるという特徴も持っています。小説においては、これは必ずしも成立しません。
以下、『エッセイ』と『小説』の原義を辞書から引っ張ってきました。
・エッセイ(随筆)と小説の原義
- エッセイ(随筆):自己の見聞・体験・感想などを、筆に任せて自由な形式で書いた文章
- 小説:作中の人物・事件などを通して、興味ある虚構の物語として散文体で表現した作品
以前『エッセイの意味と書き方』という記事の中で、そもそもエッセイとは何かというお話をさせていただきました。
エッセイという言葉の成り立ちが宗教戦争を発端としていたというお話や、エッセイと随筆が本来は別物であるというお話も、そちらで解説しておいたので興味のある方は以下の記事をご参照ください。
エッセイ&随筆の書き方におけるコツと意味とは?|【起承転結はNG!】小学生から高校生まで使える日本語&英語エッセー講座!
エッセイ風小説とは?
よく「エッセイ(随筆)はノンフィクションで、小説はフィクションだから別物なんだ」という風に勘違いされている方も多いようですが、これだけでは判別がつかないケースも数多く存在しています。
例えば、読者が作品で語られていることをフィクションかどうか見極められないケースがそれでしょう。
作者からすれば物語がフィクションかノンフィクションかというのは自明なことですが、読者からすればこれでは判別がつきません。こういった曖昧なもののことをまとめて「エッセイ風小説」と呼ぶことがあります。
また、実は「ノンフィクション」という言葉の意味もかなり曖昧なものです。
元々は「フィクション(完全なる虚構)ではないもの」という意味ですが、曲解すればノンフィクションは「事実に基づいて書かれた物語」と解釈されることもあります。
すると、どうでしょう? 意外なことが起こってしまいます。
例えば、第二次世界大戦でドイツが戦勝国となる物語を書くとしましょう。これは「事実に基づいて書かれた物語」でしょうか?
第二次世界大戦が起こったという部分は、事実に基づいて書かれているとも言えてしまうわけですね。もちろん、ドイツは戦勝国にはなりませんでしたから、これはフィクションとも捉えることができます。
このように、フィクションとノンフィクションの境界は意外と曖昧だったりするので、これだけでエッセイと小説を区分けしようとすると、なかなか難しいところがあるのです。
そもそも、エッセイの成り立ちは異なる宗教観(正義観)を持つ人々が、なにを理解してもらえずに苦しいのか、どういったことを悲しいと捉えてるのか、といったことを文字にしてぶつけ合いお互いに寛容な精神を養うことを目的とした小論文に近いものでした。
こういった歴史的な経緯を考えれば、大衆娯楽としての役割を果たしてきた小説とエッセイが全く異なった性質を持つ文学作品だということは、説明するまでもないことでしょう。
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