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天宮結衣のQ.E.D. ~幸せのクオリア~ – 第二十九章:天宮結衣のQ.E.D.

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第四十九節 天宮結衣のQ.E.D.

鳥の鳴き声に懐かしいも何もないのだろうけれど、私は事件から七年の歳月が経っていたこの日、とある思い出の旅館へと訪れていた。

 

「ご予約ありがとうございます。結衣さま」

 

浴衣を着こなしている女官さん達は、楽しそうな顔をして仕事に従事しているように見える。彼女のテンポの良い応対、丁寧な言葉じりは、その何よりもの証拠だ。そして、彼女は私にこう続けた。

 

「そういえば、お客さま。この旅館には、都市伝説がありましてね! なにも怖い伝説ではないんですが、ご興味ありますか?」

 

私は思わず一瞬固まってしまった。昔と変わっていない自分には飽き飽きするところもあるけれど、今はなんだかほっと少し面白くておかしくなって笑みをこぼしてしまった。

 

「はい。是非、聞かせてください。娘も喜ぶと思います」

 

私の背後にすっぽりと隠れて、腰のあたりに額をくっつけている娘の手をかがんでどける。

 

「ね。みーちゃんも聞きたい?」

 

娘は人見知りなのか、無言のままコクリとだけ私に頷いてみせた。

 

私は、七年前の事件で大岩さんという新さんの友人と警察署へと大人しく投降していた。あとから聞いた話によると、病院に居た不審者極まりない看護師の桜木さんは、本物の不審者であったというオチもあったのだけれども、いまやそれも良い思い出のひとつだ。

 

私と幼い娘は旅館のお部屋に導かれていく。木組みの扉をいくつかくぐり、とても良く知っているその都市伝説に耳を傾ける。

 

「ねぇ、ママたちは新婚旅行どこにいったの?」

 

「さぁ、何処だったかなぁ~」

 

そうおトボケてみせると、私によく似て長く伸びた黒髪と、うるうるとしている大きなその瞳で娘の未来(みくる)は、むすっとした貌をみせてきた。

 

その様は、まるで大好物を取り上げられたハムスターのようだ。

 

ねぇ、覚えていますか?新さん?

 

私は、久々に見る天井の木目を追っていく。締め切っていた襖から、そっと柔らかな光が差し込こんだ。

 

「結衣。お待たせ。駐車場が混んでて大変だったよ」

 

「ねぇ~、ままぁ? どこいったの?」

 

「ん? 結衣、何の話してるんだ?」

 

「ふふっ、内緒です♪」

 

~ Q.E.D. ~

 

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