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天宮結衣のQ.E.D. ~幸せのクオリア~ – 第二十六章:真実のカルテ

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第四十六節 真実のカルテ

この事件の全容は、耳を疑うほど複雑奇怪なものだった。もう少し早く気付けていれば、と少しばかり後悔の念を覚えながらも、私は桜木容疑者の口から流れ出てくる証言と証拠を突き合わせ、信じたくない驚愕の事実に目をむくことしかできていなかった。

 

そもそも、この事件の発端は天宮結衣の脱走に始まったものではなかったのだ。志波大学病院の院長である桜木幸之助、桜木敏子の実の親である彼は院内で発生した医療誤診を隠蔽しようと動いていたことが発端だったのである。

 

遡ること一ヶ月前、詠井新という大学生が、突然の胸痛を訴えて搬送された。詠井の罹っていた病気は、致死率の高い手術を施さなければ、徐々に苦しい症状と共に死を迎えるというものだ。しかし、彼はそれでも手術を受けることを頑なに拒否していたというらしい。

 

そんなある日、一人の医師が天宮結衣のカルテと詠井新のカルテを取り違え、少女の診察と投薬をしてしまっていたということらしい。

 

詠井新に投与されるはずの強力な薬剤が天宮結衣に与えられた。命に別状は無いものではあったが、彼女は一時的に副作用に苦しんでいたことだろう。

 

しかも、取り違えたカルテを渡されていた別の医師による誤診で、入院し続けておくべきだった詠井は病院を後にすることになっていたというのだ。

 

天宮結衣が脱走する日、医療誤診に気づいていた院長と桜木敏子は、多忙な医療現場において、脱走癖のあった天宮結衣が逃げても大丈夫なように、発信機が付いていたラッコの髪飾りを彼女へ取り付けていたらしい。

 

そこで予想外の事が起こってしまった。発信機の位置が病院の外へと出てしまっていることを確認した桜木敏子は、すぐさま、脱走の現場へと赴いたが間に合わず。病院の外を監視しているカメラを確認することにした。

 

そこに映っていたのは、車で逃走していく詠井と天宮、二人の姿だったという。そして、警察を呼ぼうにも医療誤診が発覚することを恐れていた桜木敏子は、証拠になってしまうカメラを壊し、警察よりも先に二人のもとへと赴き、病院へ連れ戻そうとしていたというわけだ。

 

詠井のアドレスを知っていた桜木からすれば、挽回可能な状況だと思ったのだろう。

 

つまり、私たち警察が最優先に探す必要に迫られていたのは天宮結衣ではなく詠井新の方だったというのだ。幸いラッコの発振器は、詠井と天宮の手元にあるはずだ。おおよそ近くまで接近できれば、発振器の電波が届くことになる。

 

私達はどうにか彼を死なせないために、早急に対応をしなければ。

 

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