この記事では、他人の作品を読んで良いと思った点や、取り入れておきたい技術について特集して行こうと思います!

 

小説の書き方についての解説本や指南書を読むことも、エッセンスを知っておくという点で重要です。しかし、具体的な文章を見て『なぜ、この文章に惹かれるのか?』

 

自分なりに考えていくことで、さらに作家としての個性や魅力を引き出すことができるようになるでしょう。

 

前置きが長くなりましたが、今回ご紹介する作品『ファンドゲーム』(作者:陽向 舞桜  先生)から、より具体的に為になる工夫を一緒にみていきましょう!

 

※このコーナーでは作者様から許可を頂いた上で、引用や画像の使用を行っております。

 


※当サイトの読者のみなさまへ

 

今回から特集していく【特別掲載】に関しては、『作家の味方-コンテスト』や他の書評記事とは無関係の番外記事となっています。

 

『作家の味方-コンテスト』では、今後も私が個人的にもっと評価されるべき良作!応援したい!と思った作品を取り上げていく予定です。

 

一方で【特別掲載】では、コンテストなどで既に一定の実績がある方の工夫を見ていくコーナーです(所謂プロ枠)ので、コンテストの難易度インフレは心配しないでくださいね♪


 

作品紹介

 

~あらすじ~

金を積んで命を奪う『ファンドゲーム』

三分間で運命が決まる!!!

撹乱、反計、妨害、支援など、何でもありのテクニカルスキルを使い、

相手を出し抜け!

 

より多くのトレードコインを天秤に積み上げた者が勝者!

「オープン!」

フィールド全体に巻き起こる突風。そして目の前に現れる金色の天秤。
指針が振り切った時、世界が変わる。

 

*ストーリー*

無実の罪を着せられ異世界に追放された天才トレーダー睦月タケル。そこで出会った謎の美少女リリアと共に、自らの命を賭けた『トレードバトル』という名の取引デスゲームに巻き込まれる。己の運命に抗うように、悪の組織ヘッジファンドへの復讐を果たしに向かうタケルとリリアだが、その先に待ち受けていたのは……。

 

~来歴~

第1回「マグネット!」小説コンテスト 読者選考 マグネットランキング総合1位!

磁界ランキング総合3位!

 

参考にしたいところ

 

冒頭から参考になるところが多すぎて記事が描き終わらないので巻きでいきますね(笑)。

 

台詞による心情描写

 

大抵の場合、小説は3つの部分から構成されているといわれています。ひとつが「説明」、もうひとつが「描写」、そして台詞や地の文を活用した「場面」です。

 

心情描写はこの3つの中では「描写」にあたるのですが、「場面」である台詞が心情描写の役割を果たすこともあります。

 

その一つの具体例として、この作中には「――誰か……助け……て……。」という表現が二回出てきています。

 

一度目は主人公へ突きつけられた過酷な現実に対しての台詞として、二度目は主人公の不幸な生い立ちを振り返る台詞として使われています。

 

このように、同じ台詞を別の場面で異なる要因を用意し使うことによって、どちらの理由で主人公がその台詞を使ったのか?

 

言葉の真意を読者に考えさせたり、そういうこと意味を持った台詞だったのか!とハッとさせる場面を作り出すことができます。

 

そして結果的に、主人公の心理状態を伺わせる様な台詞になり、人物の心理描写として活用できている良い例ですね。

 

ちなみに、一度目の台詞は現実世界で二度目の台詞は異世界で発言しています。ここもうまい表現になっていると思いました。

 

というのも、世界が変わっているというのに主人公の台詞(心情)が変わらないんですよね。これってかなり異常です。

 

そういう異常を取り込むことで、台詞により重みが生まれているのではないでしょうか。

 

難しいので例えてみましょう。例えば、いきなり砂漠のど真ん中に転生させられて「仕事いきたくね~」って言ってるサラリーマンを想像してみてください。

 

いや、それどころじゃないでしょ!という突っ込みを入れたくなると思います。それくらい「仕事にいきたくない」という感情の方が現実を忘れるほどに優先されているということです。

 

少し余談です。『ブラッククローバー』というアニメがありまして作中で何度も「諦めないのが俺の魔法だ!」という台詞が登場します。

 

魔法が常識の世界で魔法が使えない主人公の台詞なのですが、読者へ伝えたいであろう「諦めるな!」というメッセージを主人公の台詞としてダイレクトに読者に伝えてしまうこともあります。

 

台詞ってしゃべってるだけだと思いきや中々奥が深い表現も出来るものなんですよね。そんな意図をもった台詞を利用してみるのも作品の魅力を高める上で大切なのではないでしょうか。

 

場面描写に関するキーワードの選定

 

この作品を読んでいて、良い意味でweb小説らしいなと思った部分がありました。ライトノベルとweb小説を比較したときにまず目立つのは地の文の長さです。

 

ライトノベルはライトといいつつも、意外と描写に関して地の文が長いことはザラにあります。

 

一方で、この作品では「説明」パートでは地の文がそれなりにあるものの描写に関しての文字数はそこまで多くない印象を受けました。

 

というか、むしろ一文の長さはかなり短い方と思います。テンポが取れてすごく読みやすいと思いました。

 

しかし、地の文が短いことには当然デメリットもあります。細かい描写ができない為に状況説明が不十分になってしまうなどです。

 

そこで、重要になってくる工夫が「場面描写に関するキーワードの選定」です。この作品ではうまく取り込まれているように感じました。

 

例えば、第一話では「有罪」や「法廷」という言葉が使用されています。この2つのキーワードだけでもうどういう場所なのか何を行っている最中なのか読者はすぐに理解できますよね。

 

同様に第二話でも「緑の木々」や「大地を駆ける穏やかな風」という言葉が使用されています。

 

異世界転生というお決まり展開というのも相まって、情景が細かく描写せずともどんなところに主人公が置かれているのかわかるキーワードになっています。

 

「有罪」なんて言葉は法廷くらいでしか使わないですし、「大地を駆ける穏やかな風」なんてめちゃくちゃ自然溢れる土地でしか起こらないからです。

 

このように、限られた状況でしか使われない言葉や表現を節々にいれることでテンポ良く読める作品に仕上がっているようです。

 

もう一つ、重要なのは「単語」ではなく「キーワード」ということです。作品全体に対して言えることだと思ったのですが修飾語がバライティに富んでいる印象でした。なおかつ無駄が少ない。

 

一つの単語だけで、限られた状況を表現するのは難しいです。なので、あくまで「大地を駆ける穏やかな」という修飾語と「風」という単語のセットで、限られた状況でしか使われないキーワードにしてから用いることが重要なのではないでしょうか。

 

キャラの行動原理についての説明パート

 

この作品の第一話冒頭には主人公の来歴の説明パートがあります。冒頭に説明が来るのはあまりおすすめされないというお話もあるようですが、これは作品にもよるのではないでしょうか?

 

キャラクターの説明を冒頭に描くことは、度も何度も人物の描写を行うことでくどい文章になるのを回避できるというメリットがあります。

 

一方で、デメリットとしては説明がうまく描けていないと冒頭で読者がリタイアしやすかったり人物描写が地の文に少なくなってしまい、人物が想像しにくいといった現象が起こりえます。

 

この作品『ファンドゲーム』においては、地の文が短くテンポが良い文体を重視しているようなので、キャラクターの説明を冒頭に描くのは良い効果があると思います。

 

また、デメリットである説明文による読者リタイアを防いでいるのは説明内容にあるのだと思います。

 

ただ単にキャラクターを説明するのではなく、行動原理に関連するものだけをピックアップすることで必要な部分だけをきちんと簡潔に説明しているのです。

 

一方、以前ご紹介した『未樹との遭遇 I’m always on your side』(作者:タカトウリョウ 先生)という作品では、キャラクターについての説明パートは無かったもののスムーズに作品に入ることができました。

 

これはどういうことでしょうか?おそらく、こちらは地の文が長めに用意されている作品で、地の文にある豊富な描写の中で主人公のキャラクターを説明していく形を取っていて、

 

なおかつ、無駄な描写が徹底的に排除されているというスタイルをとっているからバランスが取れていたのではないかと推察しました。

 

まとめ

 

さて、今回は『台詞による心理描写『場面描写に関するキーワードの選定』、『キャラの行動原理の説明パート』がうまく工夫されている作品に出会うことが出来ました。

 

実は他にも取り入れたいことが山ほどあったので、少しだけ付け足しで説明しようと思います。

 

まず、主人公の名前が読みやすかったです(笑)。これ意外と大事ですからね!?かっこいい名前もいいですが、読むほうとしては読みやすい方がうれしいです(笑)。

 

加えて、第一話の文字数が800文字弱なのに対して徐々に文章量を増やし読者が疲れてきたあたりで文章量を減らしている点も工夫されているなぁと関心させられました。

 

『あらすじ』についてもですが、無理に宣伝文とあらすじをごっちゃにせず、分けて記述している点もスッキリしていて読みやすかったです。

 

最後に、物語において喜怒哀楽などの感情の動きは言わずもがな、かなり重要になってきます。

 

リリアさんのサービスカットであったり、冒頭の主人公の落ち込み具合といい、感情を動かす力のある文章・場面が多かったためその点でも評価が高い作品に出会えたと思います。

 

さて、もちろんジャンルによっては取り入れない方がいい工夫もありますので注意していただきたいですが。

 

みなさんもここでご紹介する作品たちを読んでみて面白い!と思うのであれば取り入れることをおすすめします。

 

というわけで、今日もみなさんお疲れ様でした♪

 

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